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2014年01月21日08:50

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アベノミクス始動1年での課題〜田村秀男氏

 1か月半ほど前になるが、田村秀男氏が昨年12月8日に産経新聞に書いた「アベノミクス1年 円安・株高だけでは安心できない」と題した記事は、いつものように秀逸だった。
 田村氏は次のように書いた。
 「ほぼ1年前、『大胆な金融緩和』を掲げた自民党の安倍晋三総裁が衆院選で圧勝し、『アベノミクス』を打ち出した。その『第1の矢』、日銀の量的緩和を受けてマーケットでは一時の波乱はあっても円安・株高基調が続いてきた。物価も上がり始めた。だが、安心してはいけない。長期デフレに倦み切った家計や企業は円安・株高だけでは動じなくなっている」
 家計については、「日銀の政策委員会の大勢は来年の消費者物価上昇率を消費税率引き上げの影響分を含め3%前後とみているが、銀行の1年定期預金の利率はたった0・025%。インフレ分を勘案すると家計資産はかなり目減りする」。また企業については、「勤労者は3%前後以上賃上げがないとフトコロ具合は悪くなる計算だが、企業雇用の3分の2を担う中小企業の多くは(略)賃上げも消費増税分の価格転嫁も容易ではない」。すなわち「家計資産と賃金の双方から見ても、消費税増税はかなりのデフレ圧力を呼び込む」。そこで「過去1年間ではっきりしたのは金融頼みの限界である」。これからについては、「今後の焦点は『第2の矢』財政出動と『第3の矢』成長戦略だが、いずれも迫力不足だ。5・5兆円の経済対策では消費税増税による家計負担8兆円を補えない。ならば、残る成長戦略の重みが増すが、これまでの戦略案は官僚の作文にとどまり、成長を担うべき主人公たちの顔が見えない。男、女を問わない。日本の今後を支える若者や現役世代、野心的な企業家、農業者たちの主導で、新たな消費ブームや国内投資を沸き起こす。規制緩和も法人税率引き下げもそのためならば、大胆すぎるほど大胆であってよい」と田村氏は書いている。
 さて、この記事の後、田村氏は本年1月12日に「トルコとの経済連携協定を考える」という記事を書いた。趣旨は、先に引いた記事を基調として、親日新興国とは高次元の合意をすることで、アベノミクスを強力に進められるというものである。
 「日本としては、刷り出されるマネーではなく、実体経済の成長を確実にする戦略が急がれる。(略)成長の担い手となる中小企業を政府は後押しすべきだ。他方、新興国には、日本の卓越したモノづくり、インフラ関連技術を提供し、それらの国々がグローバル・マネーに翻弄されずに済む経済体質に変革できるよう貢献すべきだ。中国のようにいくら技術貢献しても、日本の脅威となって跳ね返ってくるような相手には距離を置き、政治・安全保障・外交を含めて日本の真の国益となるような新興国との連携を密にすればよい。特にトルコとは、かつてない高次元で戦略性を帯びたEPAモデルを構築すべきだ」と。
 私はトルコのような親日新興国との連携に賛成である。東南アジア、インドとの連携はもちろん、さらにトルコへと連携を戦略的につなげるべきである。
 以下は、田村氏の記事。

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●産経新聞 平成25年12月8日

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/131208/fnc13120810300004-n1.htm
【日曜経済講座】
アベノミクス1年 円安・株高だけでは安心できない 編集委員・田村秀男 
2013.12.8 10:30

 ほぼ1年前、「大胆な金融緩和」を掲げた自民党の安倍晋三総裁が衆院選で圧勝し、「アベノミクス」を打ち出した。その「第1の矢」、日銀の量的緩和を受けてマーケットでは一時の波乱はあっても円安・株高基調が続いてきた。物価も上がり始めた。だが、安心してはいけない。長期デフレに倦(う)み切った家計や企業は円安・株高だけでは動じなくなっている。
 量的緩和とは、中央銀行が継続的に大量におカネを増発することだ。「刷ったカネをヘリコプターからばらまけば」と思う向きもいるだろうが、それではお札の信用がなくなる。かつて革命家レーニンは国の体制を崩壊させる手っ取り早い方法は通貨価値の破壊だと、喝破したそうな。
 現実には金融市場を活用する方法をとる。中央銀行は金融機関から国債などの金融資産を買い上げる。金融機関はそのカネで株式を買えば、株価が上がる。銀行から融資を受ける消費者は住宅や車を買う。企業は株式市場から資金調達しやすくなり、設備投資を増やす。需要がこうして増える。他方、発行量が多い通貨の値打ちは、量の少ない通貨よりも落ちるので、通貨安となる。すると輸出が有利になる。通貨レートが安くなれば、物価が上がる。デフレはこうして止まるし、景気もよくなる、というシナリオだ。
 問題はその通りコトが運ぶかどうかだ。米国は2008年9月の「リーマン・ショック」後、現在までの3次にわたる量的緩和でドル資金を4倍も発行し、1930年代のような「大恐慌」は避けられた。景気のほうは遅々としながらも、次第に上向いている。だが、日本は米国とは金融構造が大きく異なる。
 今年6月末現在、日本の家計金融資産の54%は現預金で、株式など証券資産は14%にすぎない。米国とは逆で株高による資産増効果は小さい。日銀の政策委員会の大勢は来年の消費者物価上昇率を消費税率引き上げの影響分を含め3%前後とみているが、銀行の1年定期預金の利率はたった0・025%。インフレ分を勘案すると家計資産はかなり目減りする。
 円安効果の波及も遅い。勤労者は3%前後以上賃上げがないとフトコロ具合は悪くなる計算だが、企業雇用の3分の2を担う中小企業の多くは今でも円安に伴う仕入れ原材料コストの上昇を販売価格に転嫁できない。大企業は別としても、賃上げも消費増税分の価格転嫁も容易ではない。家計資産と賃金の双方から見ても、消費税増税はかなりのデフレ圧力を呼び込む。
 グラフは昨年10月を100とした各種経済指標である。円安で株価はグンと押し上げられている。ところが、家計消費水準はアベノミクスの恩恵は及ばず、消費税増税前の駆け込み需要のある住宅を除けば1年前より悪い。株高による巷(ちまた)の高揚感は東京・銀座の欧州製高級車店をブランド物で着飾ったセレブでにぎわせてるだけのようだ。
 円安は進むが、一向に輸出が伸びず、貿易収支赤字額が増え続けている。量で見ると、輸出は東日本大震災後、最近に至るまで下落基調が止まっていない。輸入量は2010年初めから増加の一途をたどったあと、アベノミクス開始後は伸びが止まったものの、高水準のまま推移している。リーマン後、さらに東日本大震災後の超円高局面で、日本企業は海外生産拠点を増強し、そこからの部品・完成品の輸入を増やしている。日本からの現地への輸出型から、現地から日本への輸出型へとビジネスモデルを切り替えたのだ。それを元にもどすには、さらに円安を促進し、定着させるしかない。
 過去1年間ではっきりしたのは金融頼みの限界である。マーケットでは、今後の景気下降に備え、日銀の追加緩和を期待する向きが多い。日銀が動けば確かに株価は一時的に上昇しようが、欲深い海外の投資ファンドは次には日本株売りの口実を探すに違いない。それに追加緩和の余地は大きくない。
 今後の焦点は「第2の矢」財政出動と「第3の矢」成長戦略だが、いずれも迫力不足だ。5・5兆円の経済対策では消費税増税による家計負担8兆円を補えない。ならば、残る成長戦略の重みが増すが、これまでの戦略案は官僚の作文にとどまり、成長を担うべき主人公たちの顔が見えない。
 男、女を問わない。日本の今後を支える若者や現役世代、野心的な企業家、農業者たちの主導で、新たな消費ブームや国内投資を沸き起こす。規制緩和も法人税率引き下げもそのためならば、大胆すぎるほど大胆であってよい。安倍さんの出番だ。

●産経新聞 平成26年1月12日

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140112/fnc14011210310000-n1.htm
【日曜経済講座】
トルコとの経済連携協定を考える 編集委員・田村秀男
2014.1.12 10:31

親日新興国とは高次元合意を

 「わが国の親日感は国民性そのもの。いらっしゃい」との、トルコの友人の言葉は誇張ではなかった。昨年末に訪ねた同国の保養地のホテルで、トルコ式蒸気風呂のドアを開けた。地元の善男善女で満員。「ジャポン(日本人)か」と一斉に声が上がる。「イエス」と答えると、ただちにスペースができた。座ると握手と質問攻めの嵐だ。
 そのトルコのエルドアン首相がこのほど来日し、安倍晋三首相と日本・トルコの経済連携協定(EPA)交渉開始など経済関係強化で合意した。欧州とアジアの結節点で人口が毎年約100万人も増えている同国を市場として限定するのは矮小(わいしょう)すぎる。
 グラフを見てほしい。ドル標準株価指数「MSCI」でみるトルコなど新興国と日米の株価の推移だが、トルコの急落ぶりが際立っている。実質経済成長率が年4〜5%も伸びているのに、なぜか。
 最大の原因は米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和(QE)縮小である。QE縮小の観測が出始めた昨年前半から、欧米の投資ファンドが一斉にトルコ企業株を売り始めた。資本流出に歯止めがかからず、通貨「リラ」は下落し続ける。リラ安でも自動車など付加価値の高い産業規模は小さく輸出は伸びない。
 市場不安は同国の政情不安による、との見方が市場アナリストの間で多い。確かに盤石に見えたエルドアン政権は最近、イスラムの支持勢力で仲間割れが起き、側近の汚職騒ぎなどで揺さぶられている。しかし、政局は国際投機筋の「売り逃げ」の口実にすぎない。その証拠に、トルコに限らず、株や通貨の不安は新興国全体に及んでいる。政情が比較的安定しているインドネシアもトルコに連動する形で株価が下落している。
 ニューヨーク・ウォール街やロンドン・シティに拠点を持つ投資ファンドはグローバルな資産運用を行い、米国市場がだめなら新興国での運用比率を引き上げるが、米市場が回復してくれば、さっさと手じまいする。これまでの「新興国ブーム」はいわば、ドルの洪水に浮かぶバブル(泡)なのだ。
 日本は株高で浮かれてもいられない。新興国株の急落に加速がかかるようだと、世界の投資家たちも次第に疑心暗鬼になり、株安の波が一挙に米国や日本を襲うかもしれない。6日付の英フィナンシャル・タイムズ紙社説は「(米国株式に)バブルの前提条件が整っていると考える根拠がある」と警告した。
 日銀は「異次元緩和」で円安を呼び込んできた。米欧の投資ファンドを中心にした外国投資家は円安=日本株買いという自動売買プログラムを稼働させるので、株高が導き出される。外国投資家の投機に左右される点では、東京市場もイスタンブール市場も同じなのだ。
 日銀は昨年11月までの1年間で資金供給量を65兆円増やしたが、銀行の貸出増加額は16兆円にとどまっている。つまり、実体経済に流れ込むカネの流れは依然として弱々しい。消費のほうは、4月の消費税率引き上げ前の駆け込み需要が一段落しつつあるうえに、4月からは一挙に反動減に陥る恐れが強い。安倍首相は企業に賃上げを求め、消費刺激、設備投資増の好循環実現を狙っているが、容易ではない。
 今年は消費税率引き上げの影響で消費者物価は3%前後上昇するのが日銀の見通しだが、雇用の3分の2を引き受けている中小企業の大半は仕入れコスト高の販売価格転嫁に四苦八苦する有り様だ。賃上げの浸透は難しい。すると、消費にはデフレ圧力が加わってくる。株価は実体経済から遊離し、バブル懸念が生じる恐れがあるのだ。
 中央銀行が供給源になった投機性の高いマネーに翻弄される状況こそは、日米、新興国を含めたグローバル経済の実相なのである。
 どうすべきか。日本としては、刷り出されるマネーではなく、実体経済の成長を確実にする戦略が急がれる。本欄の5日付で触れたように、成長の担い手となる中小企業を政府は後押しすべきだ。
 他方、新興国には、日本の卓越したモノづくり、インフラ関連技術を提供し、それらの国々がグローバル・マネーに翻弄されずに済む経済体質に変革できるよう貢献すべきだ。中国のようにいくら技術貢献しても、日本の脅威となって跳ね返ってくるような相手には距離を置き、政治・安全保障・外交を含めて日本の真の国益となるような新興国との連携を密にすればよい。特にトルコとは、かつてない高次元で戦略性を帯びたEPAモデルを構築すべきだ。
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