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2011年09月01日18:25

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映像の向こう側(3)  誰に託すのか

 マイケル・カコヤニス監督「その男ゾルバ」1964 をテレビでみた。題名は、映画音楽もあって、当時からよく知っていたのだが、初めてである。時代は戦前の、ギリシャのクレタ島の田舎。イギリス人の小説家が父の遺産の炭鉱を再建しようクレタ島へ渡るときに、現場監督としてギリシャ人のゾルバ(アンソニー・クイン)という初老の男を雇う。
 炭鉱のある村には、ギリシャ正教の修道院があり、ホテルのオーナーで元高級娼婦の女性や美人で気位の高い未亡人がいた。女好きのゾルバは早速、オーナーを恋人にし、小説家に美人の未亡人を恋人にするようにすすめるが、小説家は承知しない。まじめで、無責任なことはできないのである。
 ゾルバは街に資材を買い出しに行くのだが、そのキャバレーの女に沈没してなかなか帰って来ない。その留守中に、小説家は未亡人と結ばれるのだが、以前から片思いだった青年が、そのことを聞いて自殺してしまう。葬儀で、未亡人が参列しようとした時、村の全員が未亡人を取り囲み、青年の父に殺させるのであった。復讐のつもりなのだろうが、まったく正当性がない。
 そして、ホテルのオーナーの女性も死期が迫っていて、ゾルバと形ばかりの結婚式を挙げて死ぬのであるが、死ぬ前から村人がホテルを取り囲み、あっという間に、動かせるもの全部を奪ってしまう。このオーナーの女性はフランス人らしく、遺産が外国に持っていかれるのを恐れて急いだのである。そして、ギリシャ正教の信者ではない、ということで遺体はそのまま空っぽの部屋へ放置である。いわば、遺産分けを受けたのであるから、形ばかりでも葬儀をするべきであろう、どうなっているのだ、ギリシャの田舎は、とイライラしてくる。
 ラストシーンは、炭鉱の再建も木材の切り出しにも失敗したゾルバは、小説家に言う。「おまえはいい奴だが、馬鹿になれないのが欠点だ」と。小説家の青年は、ゾルバが好きになっていて、ギリシャの踊りを教えてもらうのであった。
 監督のカコヤニスはもちろんギリシャ人。原作者はニコス・カザンザキス(1883-1957)もギリシャ人で、炭鉱の再開発をゾルバスという人物と取り組んだ経験をもとにしているとのことである。したがって、小説も映画もギリシャの将来を憂えてのことである。原作者は一時社会主義に魅かれて、スターリン治下のソ連を訪れ、したたか失望したとのことである。
 結局、ギリシャの将来を女好きでだが、苦労人でめげないゾルバに託したのであろう。映画の原題は、Zorba the Greek 。つまり、ギリシャの男ゾルバである。邦訳では何の事だかわからない。
 日本映画では、きだみのるを自由に翻案した「気違い部落」1957 を思い出した。これは当時見たことがある。日本社会批判なのだが、ただの貧乏村をからかったものと思われているらしいが、現在の日本をみると、当時の日本はもちろん、ギリシャのありさまも他人ごとではない。
 いったい誰に託すのか。
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