今から100年近く前、日本の観客を恐怖と熱狂に陥れた悪の天才がスクリーンにいました。
その名はマブゼ博士。
変装の名人にして天才的な催眠術使いであり、悪の犯罪帝国の首領です。
巨匠フリッツ・ラング監督と、狂気の名優ルドルフ・クライン・ロッゲが生み出したキャラクターで、1922年の『ドクトル・マブゼ』と、1932年の『怪人マブゼ博士』の2度に渡り、映画になりました。
今回、中古DVDで入手して見た『怪人マブゼ博士』は、3度目の映画化にして、フリッツ・ラング監督の遺作となった作品です(2作目と同じ邦題なのがまぎらわしい)。ゴールドフィンガーことゲルト・フレーベが出演しており、見たかった映画でした。
1960(昭和35)年、西ドイツ作品。モノクロ映画です。日本でもちゃんと公開されております。
【物語】
テレビのリポーターが信号待ちの車内で不可解な死を遂げ、暗殺と断定される。
かつてヒトラー政権以前のドイツを大混乱に陥れた犯罪者マブゼ博士の手口に酷似していたが、博士は25年前に死んでいた。クラス警部(ゲルト・フレーベ)はさっそく捜査を開始する。
一方、市内のホテルで若い女性の自殺未遂事件が発生。ホテルの客だったアメリカ人富豪が偶然女性を助けるが、不審な出来事が次々と起こる。
…当のマブゼ博士は本当に死んでいる訳で、その後継者を名乗る者が、生前の博士が残した計画を遂行していくという物語です。押井守の『機動警察パトレイバー THE MOVIE』の源流はこの映画だったのか。
戦前の2作に比べると、随分と小粒なスケールなのが残念。
アメリカ人富豪とヒロインのロマンスがまどろっこしく、本筋の犯罪物語から逸れまくるのが欠点ですが、クライマックスのたたみ掛けるようなアクションはスリル満点です。
まさかの人物が、実はインターポールの潜入捜査官で、意外な活躍を見せるなど、映画的に楽しい見せ場もあります。
『ゴールドフィンガー』前のゲルト・フレーベは、この映画が当たったらしく、別監督によるマブゼ・シリーズに数本出演しています。この映画では悪を追う警部だったのが、わずか数年後にはジェームズ・ボンドの宿敵となるのが面白い。
★★★。画質が玉石混合なIVCから出ているDVDでしたが、映像も音声も良好でした。
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