ケネス・ブラナーといえば、シェイクスピアを数多く映画化した監督であり、最近では空疎なハリウッド大作を監督しまくったり、ちょっと自己陶酔型の俳優でもある人ですが、自伝的な最新作『ベルファスト』は違いました。
同監督の最高傑作と思います。
【物語】
1969年。北アイルランドの都市ベルファストでは、宗派の対立による暴力沙汰が深刻化していた。小学生の少年バディ(ジュード・ヒル)とその家族も、街中で頻発する暴力事件に怯えていたが、当の本人は恋や映画に夢中だった。
しかしロンドンで出稼ぎをしている父(ジェイミー・ドーナン)に、イングランドで暮らでるという話が来たため、住み慣れた故郷を離れるかどうかで家族は思い悩む。
…冒頭、現代の近代都市ベルファストが鮮やかなカラーで映し出され、カメラがそのまま下へパンすると、1969年の街並みが白黒で広がります。そこからはほぼ全編モノクロの世界。郷愁に満ちています。
どこにでもいる普通の家族が暴力に直面するというのは、奇しくも現在のウクライナ問題を反射しているようでもあり、暴力の理不尽さを強く感じさせます。
家族を演じた俳優たちは、それほど有名ではありませんが、主人公の祖父=キアラン・ハインズ(ベルファスト出身)と、祖母=ジュディ・デンチが貫禄たっぷりの名演を見せてくれます。特にジュディ・デンチのラストのセリフと眼差しは、深く印象に残りました。
ケネス・ブラナーが「本当に撮りたかった」映画なのでしょう。ハリウッド超大作の縛りから解放されて、自由自在に語る演出が、実に生き生きとしています。
ジョン・ブアマンの『戦場の小さな天使たち』をちょっと思い出しました。★★★。
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