夏から大いに楽しませてもらった、地元映画館(電気館)での市川雷蔵祭が最終回を迎えました。次回からは爆音映画祭や『スパイの妻』が上映されます。
最終回の今回は、巨匠監督2人の作品を続けての鑑賞。贅沢な時間でした。
●『破戒』(1962(昭和37)年大映)白黒シネマスコープ・サイズ
島崎藤村の原作の映画化で、監督は市川崑です。撮影・宮川一夫。
市川崑は一番好きな監督なので、この映画もDVD-BOXで所有していますが、未見の作品はスクリーンで見たいので機会を伺っていました。
明治の末期、被差別部落出身の小学校教員(雷蔵)が、決して身分を明かすなと言われていた父の死と、同じく部落出身の思想家(三國連太郎)との出会いをきっかけに、ある決断をするまでを描いています。
出自に思い悩む主人公を繊細に演じた市川雷蔵の、これはベストな1作。
思えばこの稀代の俳優は、眠狂四郎もそうだけれど、複雑な出自を背負った影のある主人公を演じると、何か滲み出るような気迫があり、ただならぬものを感じさせます。
この映画でデビューした藤村志保、運動家役の三國連太郎も良いですが、女好きだが差別はしない住職役の中村鳫治郎、そのおかみさん役の杉村春子もいい(小津安二郎監督ゆかりの2人なのが興味深い)。主人公の友人教師役の長門裕之の真っすぐさと、酒におぼれる同僚教師役の船越英二が対照的なのも面白いです。
難しいテーマを、決して悲観的にならずに、映像美を持って表現してみせた市川崑。
その要求に応えてみせた市川雷蔵。傑作です。★★★★
●『眠狂四郎無頼剣』(1966(昭和41)年大映)カラー・シネマスコープ・サイズ
シリーズ第8作。監督は三隈研次で、このシリーズで一番好きな『勝負』(第2作)もこの人です。脚本がこれまた巨匠の伊藤大輔ということもあって、シリーズでは異色な感じもしますが、面白さも秀でています。
先ほどの『破戒』での清純で無垢な演技とはまったく異なる妖艶さを放つ、藤村志保が素敵。狂四郎と同じ円月殺法の使い手、天知茂はシリーズ屈指の強敵でした。
2重3重に折り重なった人間関係が複雑ですが、勧善懲悪の時代劇とは一線を画する展開で、79分という短い上映時間を一気に見せ切ります。
夜釣りを楽しむ狂四郎など、超人的な主人公の日常のひとコマを捕らえたシーンもあり、印象的でした。★★★。
ログインしてコメントを確認・投稿する