クリント・イーストウッド監督が、2015年にフランスの高速鉄道内で発生したテロ事件を映画化した『15時17分、パリ行き』を見て来ました。
実話をもとにしているという点では監督の前作『ハドソン川の奇跡』と同じですが、事件の当事者の3人(主人公)を当の本人たちが演じているというが斬新です。
その点では、これまでに見たことのない映画でした。
【物語】
同時多発テロ後のアメリカの小さな町で育った少年たち、スペンサー、アンソニー、アレクの3人は、問題児として親や先生から手を焼かれる存在だった。やがて3人のうち2人は軍に志願し、それぞれ成功や挫折を味わうが、久しぶりに再会を誓った3人はヨーロッパ旅行を計画する。
そして2015年8月。パリ行きの高速鉄道に乗り込んだ3人は、テロと遭遇する。
…映画の大半は、主人公の3人の少年期から青年期までの成長に費やされ、テロのエピソードはわずかです。
しかしその間、主人公たちの過去とテロに遭遇するまでの現在とを細かいカットで交互につなぎ、緊張感を持続させる高い演出力は、イーストウッド監督の名人芸と言えます。
本人役をそのまま演じた3人は、もちろん演技など素人な訳で、それでも不自然さを感じさせないのが、イーストウッド監督の凄いところです。
それでも決してドキュメンタリーにはせず、あえて映画的なカット割りをつむぎ、ベテランのトム・ハンクスとアーロン・エッカートが主役だった前作とは手法を変えているのも見どころでした。
主人公たちの何人かが、列車に乗り込む前に、劇的な運命の変化を予感するシーンがありますが、作為を感じるドラマ的要素はこのシーンぐらいで、あとは感情を抑えた冷徹な視線で描かれています(少年時代の学校でのエピソードはドラマ的なので、時間の経過とともにどんどん冷静になっていくという構造も目新しい点です)。
クリント・イーストウッドの映画には、いつも驚かされてばかりです。
★★★。
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