今は無き西ドイツ映画『バグダッド・カフェ』を、”午前十時の映画祭”で見て来ました。
だいぶ昔にVHSで見ているのですが、今回の上映はデジタル・リマスター化された”ニュー・ディレクターズ・カット版”です。未公開シーンが監督によって追加されており、たしかに以前見て記憶になかったシーンがありました。
1987年の西ドイツ映画を、2008年に再編集・リマスター化した作品です。
【物語】
ラスベガス近郊、モハヴェ砂漠にあるさびれたカフェ。
ドイツ婦人のジャスミン(マリアンネ・ゼーゲブレヒト)は、夫とクルマで旅行をしていたが、喧嘩をしてクルマを降りてしまう。行くあてのないジャスミンはカフェに併設されたモーテルに泊まることにするが、クセのある常連客がいるだけで、閑散としていた。
しかし、ジャスミンの人柄は周囲の人々の心を次第に溶かしていく。
…ぜんぜん違う文化の異国からやってきた人間が、閉鎖された空間の人びとの心を和ませていく映画には名作が多く、『かもめ食堂』に『バベットの晩餐会』などがあります。『バグダッド・カフェ』はそのジャンルのはしりです。
ドイツからやってきた中年女性がラスベガス近郊の砂漠に降り立つというだけでもシュールなのに(しかもそのスタイルはドイツ人女性の典型のよう)、黒人家族が経営するさびれたカフェに住み込むというのは、もはやファンタジーの領域です。それを現実のように見せてしまうのが映画の魔法です。
俳優がみんな良いのですが、中でも大ベテラン=ジャック・パランスの変わらぬダンディさが素敵。むかしハリウッドでセットの背景画を描いていてたという初老の画家で、カフェの敷地内にあるトレーラーで暮らしている男。女性に対する気遣いが紳士そのものです。
砂漠を映し出すざらついた粗い映像に、次第に明るい花が咲いていくような温かい展開が、何とも言えません。主題歌ともども名作です。
★★★★。
ログインしてコメントを確認・投稿する