前から見たかった市川崑監督の怪映画『東北の神武たち』(1957)を、ついに見ることが出来ました。
シネマスコープ黎明期の”東宝スコープ”第1回作品であり、「楢山節考」の深沢七郎の原作を映画化したものです。
上映時間59分という中編で、ソフト化もされておらず、再上映も少ない幻の映画です。
1957(昭和32)年の東宝映画です。
【物語】
ある東北の寒村。
長男は優遇され、次男以下は”ヤッコ”と呼ばれて冷遇されていた。ヤッコは髭を剃ることも許されず、神武天皇にも似たその風体から”ズンム”とも呼ばれていた。
ある家の旦那が悶死する際、妻に「ヤッコたちと一晩ずつ寝て男にしてやれ」という遺言を残したことから、期待に胸を膨らませるヤッコたちだったが、口が臭いことで知られる利助(芥川比呂志)だけが村八分にされてしまう。
…これはまさに大珍品。
なぜこの題材を東宝スコープの第1回作品に選んだのか(しかもパースペクタ立体音響という豪華スペック)、しかも大映に在籍していた市川崑に監督を依頼したのか不明です。しかしちゃんと市川崑らしい映画に仕上がっているのが凄いところです。
見た目は神武天皇さながらなのに村全体から蔑まれている異形の集団”ヤッコ”たちが、これまた集団でガサガサっと動き回る姿は、まるで怪奇映画。オール・ロケーションだったのがクライマックスになると表現主義的なセットへと変わり、夢を見ているかのようなラストシーンへと消えてゆくのも、また幻想的です。
市川崑監督にしてみれば、この前がシュールなコメディ『満員電車』、この後がスタイリッシュな犯罪コメディ『穴』というのも凄い話。とどのつまり、只者ではない凄い映画なのでした。
★★★。
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