名優・笠智衆の自伝「俳優になろうか」を数年前に神保町の古書店で見つけ、愛読しています。
サイレント映画の大部屋時代から、小津安二郎監督や木下恵介監督との出会い、『男はつらいよ』出演に至るまで、日本映画史とともに笠智衆の人柄がそのまま反映されたような暖かい文体で、何度読み返しても飽きません。
この本の中に、木下恵介監督のデビュー作『花咲く港』 (1943・昭和18年)に関する記述が出てきます。DVDを見つけたので見ることができました。
戦前のコメディです。
【物語】
九州の小さな島に、2人のペテン師(小沢栄太郎・上原謙)がやって来る。
かつての島の名士の遺児を語り、村人に架空の造船会社立ち上げを持ちかけ、村人から集めた準備金を持ち逃げしようという計画だった。
だが純朴な村人たちは2人を決して疑わず、造船会社設立のために尽力。予想以上の大金が集まってしまい、事が大きくなり過ぎて狼狽する2人だったが、そこへ日米開戦の報が入る。
…国策映画とは思えないほどのどかなコメディですが、鋭さも見え隠れするあたり、のちの大監督の出現を予見させる作品でした。
ペテン師にいとも簡単に騙されていく村人たちの中で、強欲な網元(東野英次郎)だけが疑うとか。その網元を非国民と罵倒する馬車会社の社長(笠智衆)とか。ちょっと見ただけでは分かりにくいものの、体制批判・戦争批判を巧妙に織り交ぜているのがミソです。
数年後、小津安二郎監督の『東京物語』で老夫婦役を演じる笠智衆と東山千栄子が、2人とも若くはつらつとした演技を見せているのも面白いです。
★★★。
時代を感じさせるポスターを見つけました。
戦前の日本映画は、もっと勉強しないといけません。
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