シルバーウィーク最終日の今日、昭和36(1961)年製作の日本映画を立て続けに2本見ました。
正反対のタイプの巨匠監督による2本の作品です。
●『小早川家の秋』(1961(昭和36)年東宝/宝塚映画)
小津安二郎監督が唯一、東宝で撮った作品。
京都の老舗の造り酒屋を舞台に、当主の万兵衛(中村鴈治郎)が起こしたある騒動と、突然の死による一族の思惑を静かに描いた名作です。
東宝からの熱烈なラブコールに応えて、小津監督が単身乗り込み獲ったとされる本作、ホームグラウンドの松竹とは異なる撮影環境からか、俳優陣からは緊張感も感じられます。
当の東宝も監督の期待に応えるべく、東宝スターの総動員で、おなじみの原節子・笠智衆・加東大介・杉村春子に加え、森繁久彌・小林桂樹・宝田明・団玲子・新珠三千代・司葉子らが共演。2度と再現不可能な、まさに日本映画界の至宝とも言うべきスターを揃えての、誠に見事な映画でした。
撮影現場では、小津監督と森繁久彌が対立したなど、映画以上に興味深いエピソードも残されています。
ラストの葬式のシーンでは、小津監督の強烈な死生観を漂わせ、他の小津作品にはない異質なものを感じます。
★★★★。
●『豚と軍艦』(1961(昭和36)年日活)
今村昌平監督の傑作”重”喜劇です。
スラムとネオン街が入り乱れるような横須賀の街を舞台に、ヤクザの世界から抜け出そうともがく青年(長門裕之)と、その恋人(吉村実子)を描く群像劇です。
逆境と酷い環境にあっても全力で必死に生きる人々を活写。そのエネルギーの濁流が、豚の大群が横須賀の街になだれ込むという強烈なラストに結実しておりました。
キャラクターも強烈。
ガン・ノイローゼに悩むヤクザの兄貴分を演じる丹波哲郎がいい。病院を抜け出し、フラフラになりながら線路沿いの看板にしがみ着くと、生命保険の看板だったという可笑しさ。
それ以上にインパクト大なのが加藤武演じるヤクザで、殺した男の死体を豚に食べさせてしまい、みんなで豚の丸焼きを食べていると金歯が出てくる場面。みんながげえげえ吐いてる中、ひとりヘラヘラ笑って豚を食べているという不気味な男を怪演。いつもギラギラしていて凄まじい男でした。
撮影当時高校生だった吉村実子の体当たり演技も見どころでした。
★★★。
…かたや、死を静かに見つめた映画と、かたや生へのエネルギーを炸裂させた映画。どちらも傑作です。
ログインしてコメントを確認・投稿する