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2015年09月14日00:23

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70年代パニック大作の復権 『天空の蜂』

きのう見た新作映画の3本目は『天空の蜂』でした。東野圭吾の原作を映画化したサスペンス・アクション大作です。

面白みの少ない実写邦画においては、これは出色の出来であり、珍しいことに大変面白い映画でした。


【物語】
1995年。
自衛隊が民間企業に発注して開発させた大型ヘリ”BIG B”が、完成披露の日、何者かの遠隔操作によって強奪されてしまう。ヘリには、開発主任の技師・湯原(江口洋介)のひとり息子が乗ったままであった。やがてヘリは、敦賀の高速増殖炉「新陽」の上空で静止し、まもなく犯人からの犯行予告が届く。それは、日本中の全原発を停止させない限り、ヘリを増殖炉に墜落させるという衝撃的なものだった。


…監督の堤幸彦は、間違いなくこれがベストの作品です。小ネタに終始することなく、徹底してアクションとサスペンスに演出を集中させ、骨太な大作を見事に仕上げています。

恐らくこの作品の根底にあるのは、1970年代に作られた邦画パニック大作群への愛でしょう。

元国鉄職員の健さんが新幹線に爆弾を仕掛ける『新幹線大爆破』に始まり、自衛隊がブルートレインをジャックしてクーデターを起こす『皇帝のいない八月』、これまた新幹線が脅迫される『動脈列島』、そして極め付けは、ジュリー演じる高校教師が原発から盗んだプルトニウムで原爆を作り、政府を脅迫するという大傑作『太陽を盗んだ男』。これらの作品への熱いリスペクトのようなものを、『天空の蜂』から感じるのです。

ある種の正義感と悲壮感を抱えた犯人像というのは『動脈列島』からだし、複数の犯人グループが交錯するのは『新幹線大爆破』。何よりも、あの70年代の熱い映画群から受け継いだDNAは、観客がいつの間にか犯人側を応援しているという、ピカレスク・ロマン的面白さに集約されています。

技術系統は異なれども同一グループの社員であり、過去の因縁から激しく対立するエンジニアを、江口洋介と本木雅弘が熱演。特に本木雅弘は、『日本のいちばん長い日』で昭和天皇を演じきったあとの作品がこれで、2作続けてレベルの高い演技を見せてくれます。日本にもついにこういう俳優が出たのかという嬉しい気持ちです。

たたき上げの刑事で、地道な捜査で犯人を追う柄本明、現場と会社の板挟みに陥る原発所長を國村準が演じており、最近の邦画では非常によく見かける俳優ですが、それぞれ最高の演技です。この2人がいてこそ、主役の2人が引き立つのです。

映画には、もはや諦めの境地に達したかとも思える原発問題への静かな怒りが、原発推進側からも反対側からも双方向から描かれており、巧妙なバランスを取りつつ観客に問題を投げかけます。そして、それらに無関心な国民への啓蒙も痛烈に込められています。

類似したジャンルである押井守の新境地『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』は超えられていないものの、単なるアクション大作には終わらず、かといって邦画の悪いクセであるサスペンスの断絶は起こさず、絶妙に作り上げられた傑作と言えます。

★★★★。目下のところ、今年の映画のトップ10に入った作品です。
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