各国映画のオールタイム・ベスト1とは何でしょう。
アメリカ映画だと、『市民ケーン』。
イギリス映画だと、『第三の男』。
フランス映画だと、『天井桟敷の人々』。
では日本映画ではどれかというと、大抵は『七人の侍』か『東京物語』になるでしょう。
しかし半世紀前までは、日本映画のオールタイム・ベスト1といえば『忠治旅日記』でした。
半世紀のあいだに、『忠治旅日記』を1位に推す人はほとんどいなくなりましたが、それもそのはず、この映画は長きにわたりフイルムが失われていたからです。
その『忠治旅日記』がついに国内盤ブルーレイでお膝元の日活からリリースされ、ついに見ることができました。
1927(昭和2)年、日活大将軍撮影所。特典映像を含み、本編約111分。
白黒(染色)作品です。
【物語】
友人の遺児・勘太郎を連れて逃亡していた侠客・国定忠治(大河内伝次郎)。
追手が迫り、周囲にも裏切られ、やむなく勘太郎を預けた忠治は、越後の造り酒屋に番頭として入り込む。しかし病状が悪化し、身元もばれたため、病身を押しての逃避行となる。忠治最期の時が、刻一刻と迫っていく。
…もともと3部作として製作されていた『忠治旅日記』(「甲州殺陣篇」「信州血笑篇」「御用篇」)。第一部はフイルムが1分しか現存せず、第2部は3分の1、第3部だけが奇跡的にほぼ全編残されており、本作は2・3部の総集編です。
90年代初頭に広島の民家でボロボロのフイルムが発見され、2度の大掛かりな修復を経て、ここまで蘇りました。その顛末だけで、1冊の本が書けるほどのエピソードがあります。
聞きしに勝る、すごい映画でした。
100年近く前の映画とは思えないほどの大胆な構図、大迫力の殺陣、大河内伝次郎の鬼気迫る演技(ブルーレイに収録の活動弁士=坂本頼光の活弁音声も最高)。日本映画特有の、滅びの美学の原点はここにあり。やること成すことが裏目に出て、寂しさの中で滅んでいく一人の男の世界を、かくも劇的に詩的に描いた映画が100年前にあったとは。
もはや驚嘆としか言いようがありません。
ちなみに、某動画投稿サイトには出展の怪しい本編映像がアップされていますが、今回のブルーレイ版(国立映画アーカイブ復元コレクション)とは異なる別物であることは明記しておきます。
★★★★。
1分しか現存しない第一部「甲州殺陣篇」が発見されたとき、★は5つになることでしょう。
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