今年のアカデミー賞の有力候補のひとつ、『イニシェリン島の精霊』を見て来ました。
『スリー・ビルボード』が鋭かったマーティン・マクドナー監督の最新作です。
【物語】
1923年のアイルランド。
本土で起きている内戦を尻目に、対岸にある小さなイニシェリン島は平和だった。
わずかな家畜を育てて生計を立てているパードリック(コリン・ファレル)は、いつものように長年の友人であるコルム(ブレンダン・グリーソン)をパブに誘うが、なぜかコルムからは絶交を言い渡される。
身に覚えのないパードリックは、なぜコルムが自分と絶交したがっているのか分からず、周囲の人びとも不思議がる。
やがてコルムは、「自分に話しかけてきたら自分の指を1本ずつ切り落とす」とパードリックに告げる。
…フランツ・カフカ風の不条理劇です。
記事によってはブラック・コメディと評されていますが、笑える要素はほぼ皆無です。
どちらかと言うと”イヤミス”に近い感覚の映画でした。
ある日とつぜん、友人から絶縁され、しかも理由が分からないという苦境に陥る主人公に、コリン・ファレル。この人はアクションスターのイメージが強いですが、最近はA24『アフター・ヤン』にも出ていて、なかなかどうして芸術映画もこなす才人です。
劇中の出来事から性格が一転するのですが、そのあたりの切り返しもうまく、今年の賞レースの男優賞では最有力の一人であることは間違いなさそうです。
対するブレンダン・グリーソンもいい。友達に絶縁を言い渡し、でもどこか友情を捨てきれていない節もあって、表現が絶妙でした。
2人の俳優のかもす緊張感に目が離せませんでした。
『獄門島』ばりに閉鎖的で、寂しい孤島が舞台というのが横溝正史的です(しかも濃茶の尼までいる!)。
カーター・バウェルのスコアが耳にこびり付いて離れなくなります。
★★★。
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