水上勉のエッセイ「土を喰う日々」(1978)を映画化した『土を喰らう十二か月』を見て来ました。
自分は基本、自炊しているのですが、自分で料理する人にはこたえられない映画。
もちろん、料理しない人にも、です。
【物語】
信州の山奥。作家のツトム(沢田研二)は原稿を書きつつ、野菜を育て、山菜や果物を採って食べ、静かに暮らしていた。編集者であり、年の離れた恋人である真知子(松たか子)がたまにやって来る。近くには、同じように暮らしている義母(奈良岡朋子)もいる。ツトムとその周囲の人びとの1年間が過ぎていく。
…言うまでもなく、沢田研二演じる作家は、水上勉その人。風貌は似ていませんが、自己流という料理の手つき、手さばき、野菜を水で洗う手仕事の姿は、ふだんやっているとしか思えない動作。劇中で料理を監修した土井善晴先生の手ほどきも良いのか、とても様になっています(その後ろ姿には色気さえ漂います…松たか子も惚れる訳です)。
映画の後半、主人公の作家が病に倒れてからは作風が変わり、監督の死生観が強く滲み出たトーンに変調します。義母も死に、恋人も去っていき、死を強く意識するようになっても、なお季節の野菜を採り、ひとり料理する沢田研二の姿。人生の寂しさが出ていて切なくなります。
電気も文明もないような山奥で、野菜や山菜をとって暮らす生活は、現実には厳しいものでしょう。しかし映画は、現実世界の雑事を忘れさせてくれる悪魔のようなものなので、そんな生活に憧れるのは自由なのです。
いつかは土を食って生きていきたい。そんなことをしみじみ感じた映画です。
★★★★。
92歳だという名女優・奈良岡朋子が絶品です。
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