巨匠と呼ばれる監督の多くは、好みのジャンルを極めるもの。
ジョン・フォードといえば西部劇の神様ですが、そんな彼が唯一撮ったミステリーで、しかもイギリス映画という異色中の異色作『ギデオン』をDVDで見ました。
1958(昭和36)年、コロムビア映画。撮影はイギリスのMGMスタジオです。
カラー・ビスタサイズ。日本公開はだいぶ遅れた1977(昭和52)年でした。
【物語】
ロンドン。
スコットランドヤードのギデオン警部(ジャック・ホーキンス)の朝は早い。
子どもたちと洗面所の争奪戦、あわただしい朝食の最中にも、情報屋からタレコミの電話がかかってくる。
オフィスに出勤するやいなや、汚職警官の事件や猟奇殺人の発生、給料強盗事件の処理に忙殺され、昼食をとる暇もない。面倒な上司をかわしつつ、複数の事件を同時に処理していく警部。
やっとのことで帰宅するも、事件発生の電話が鳴りやむことはないのだった。
…撮影フレディ・ヤング(『アラビアのロレンス』)、美術ケン・アダム(007シリーズ)という豪華なスタッフからも、映画の神様をロンドンに招いた英国側の緊張ぶりが伺えます。
巨匠も期待に応えてか、見事な仕事をしています。さすがと言うべきか。
同時発生的に起きる複数の事件、中核となって処理していく主人公の警部、さらに市井の人たちまでを一筆で描き切る、シームレスな演出は、老練な映画監督ならではの腕。しかも抜群に面白い。
主役のジャック・ホーキンスは、バイプレイヤーとして一流の俳優だけど華がないなあと思っていたのに(失礼)、どうしてどうして堂々たる主役ぶりです。
上司や妻には頭が上がらず、面倒な事件の連発に休憩する暇もない男の役。それが後半で、ある事件の真犯人と対峙するシーンで、刑事の風格と鋭さを醸して見せる。並みの俳優ではこうは演じられませんよ。鳥肌が立ちました。
小道具の使い方も神業級。ヒッチコックやビリー・ワイルダーともいい勝負です。
★★★★。傑作です。
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