山田洋次監督の『家族はつらいよ』(2016)の続編、『家族はつらいよ2』を見て来ました。
スタッフ・キャストは前作とほぼ同じですが、スター・システムが導入されており、小林稔侍が前作とは異なる重要な役で出演しています。
【物語】
都内の一戸建てに家族3世代で暮らす平田家。
70を超えた祖父・周造(橋爪功)は、車を運転して外出するたびに車を傷つけてしまい、心配した家族によって運転免許の返上を迫られるが、本人にその気はまったく無い。それどころか、行きつけの居酒屋の女将・かよ(風吹ジュン)を車に乗せて運転中、トラックにぶつけるという事故を起こしてしまう。平田家にふたたび緊張が走る中、周造は、高校時代の友人・丸太(小林稔侍)に偶然再会し、酒に酔った丸太を家の2階に泊まらせる。
翌日、家族会議のために集まった次男の庄太(妻夫木聡)らは、2階で見知らぬ男が死んでいるのを発見。大騒動となる。
…かつて、今村昌平監督は、「重喜劇」という社会派タッチの重たいコメディを撮っていた時期がありましたが、この映画は山田洋次版「重喜劇」とも言うべき重い仕上がりになっており、山田監督のフィルモグラフィの中でも異彩を放つ存在と言えそうです。スタッフ・キャストを前作と共通させてはいても、異なる印象を与えるのがポイントです。
前作では熟年離婚を取り上げ、今回は無縁社会をテーマのひとつとしています。
主人公の周造は、口は悪くとも家族にも経済的にも恵まれ、悠々自適の隠居生活をしておりますが、そこに飛び込んでくる高校時代の旧友・丸太は、身寄りもなく、生活にも困窮している有様。この旧友が周造の家で意外な死を遂げるところから、物語は大きく前進します。
知らない男が自宅で死んでいるという異常事態に狼狽する家族を尻目に、周造は叫びます。
「まっとうに税金を支払い、雇用を生み出してきた男が、70を過ぎてもなお額に汗して過酷に働いている。いったいこの国は、この男をいつまで働かせるつもりなのか」
悲痛で重いセリフでした。前作ではあまり共感できるキャラクターとは思えなかった周造=橋爪功が、この瞬間で一気に見るものの心を掴みます。
また、ビスタサイズだった前作から変わり、本作はシネマスコープ・サイズで撮影されています。その見せ方にもベテラン監督の職人の技が光る瞬間がいくつもありました。
例えば、周造がベッドの上に足を投げ出して、向かい合うベッドに座る妻の富子(吉行和子)を会話をする場面。カメラは周造の顔は移さず、周造が手持ち無沙汰に動かす足の指と、北欧旅行のために楽し気に準備を進める富子の表情を同一のシネスコ横長画面に捕らえているのですが、周造の顔を映さずとも、どんな顔で妻と会話をしているのかが想像できてしまう。この夫婦がどんな夫婦なのか、前作を見ていない観客にも想像できるんですね。
他にも、家族を演じる多彩なキャストが一同に会する場面では、登場人物たちは重なり合わず、計算された奥行の中で、順に会話を交わす。こういう演出をできる監督は日本にはいなくなってしまいました。
名人監督と名人俳優による大人の映画を見られて、非常に良かったです。★★★★。
(日本映画には珍しくオープニング・タイトルで遊びまくっているのも楽しいです)
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