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2022年01月15日11:57

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民主対専制15〜近代西欧の民主主義

●近代西欧の民主主義

・近代民主主義の発生・発達
 民主主義は、古代ギリシャのポリスが滅んだ後、長く人類の歴史から姿を消していた。民主主義は、古代ギリシャにおいては愚民政治ないし暴民支配を意味するものとして、しばしば嫌悪された。それが望ましい政治形態として受入れられるにいたったのは、ヨーロッパ文明においてである。
 ヨーロッパ文明では、中世の末期に絶対的な権力を持つ国王が専制主義の体制を敷くようになった。これに対して、貴族や新興資本家が抵抗し、既存の権利を守ろうとした。さらにそこに平民が加わって、政治権力への参加を求めるようになった。
 この過程で、まず自由主義(リベラリズム)が発達した。自由主義は、国家権力から権利を守るために権力の介入を規制する思想・運動である。いわば権力への抵抗である。最初は、貴族や新興資本家などが権力に抵抗をしていたが、そこに平民が加わり、民衆が段々存在感を増して、権力への参加を求めるようになった。そこに発達したのが、民主主義(デモクラシー)である。民主主義は、民衆が政治に参加する制度であり、またそれを求める思想・運動である。いわば権力への参加である。

・権力を規制するための憲法の制定
 イギリスでは、アングロ・サクソン人やデーン人等が海外から次々に侵入して、先住民のケルト人を駆逐してきた。1066年に北フランスからゲルマン系のノルマン人がイングランドを征服した。これをノルマン・コンクェストという。その結果、王族・貴族はフランス系だが、大衆はアングロ・サクソン系やケルト系という階層社会となった。民族支配と階級支配が一元的で、支配階級と被支配階級で民族や文化の異なる社会になった。
 イングランドの王は、やがて強大な権力を持つようになった。専制主義の強大化である。これに対し、1215年、イングランド王ジョンに対し、封建貴族が文書で要望を出し、承認・調印させたものが、マグナ・カルタである。国王の徴税権の制限、人身の自由、不当な裁判による逮捕・財産没収・追放の禁止、法による支配等を明文化した。王権を制限し、貴族の特権を確認したもので、一般人民の自由を規定したものではない。
 その後、イギリスでは中世の身分制議会が国王の強権政治に対する抵抗の場となった。庶民から新興階級が出現すると、議会は貴族院と庶民院で構成されるようになった。1628年には国王チャールズ1世に対して、臣民の権利の確認を求める権利請願が提出された。国王はやむなく裁可したが、議会と対立すると、議会を解散し、以後、11年間、無議会政治になった。
 以後も国王の横暴は止まず、1629年のピューリタン革命では、国王が処刑され、一時共和制が成立するに至った。再び王政に戻ったが、国王への反発は収まらず、1688年に名誉革命が起こった。この時には、仮議会がウィリアム3世とメアリー2世の共同統治の条件として権利宣言を提出し、「臣民の権利および自由を宣言し,王位継承を定める法律」として制定された。ジェームズ2世の不法行為を列挙した後、国王の法律執行停止・適用免除、課税、平時における常備軍の維持等を議会の承認なしに行うことを違法として、国民の古来の権利と自由を確認した。
 イギリスは不文憲法の国ゆえ、一つにまとまった文書としての憲法は持たないが、マグナ・カルタ、権利請願、権利章典等の歴史的な文書や様々な判例等の総体が立憲制度を構成している。イギリスに続いて市民革命が起こったフランスでは君主制が廃止されて共和制に移行した。その際、共和制の政体を定める成文憲法を制定した。またイギリスから独立したアメリカ合衆国は、共和制の政体を定める成文憲法を制定した。
 フランス・アメリカの成文憲法は、王政の廃止、または王政からの離脱を前提としており、もはや国王の権力の規制を制定の要件としていない。だが、近代西洋文明諸国において、立憲制度が発達したのは、国王の権力への規制のためだったことは、歴史的に明らかである。国王の権力への規制のための法律として、憲法が作られたということである。道徳では抑制できない欲望は、法律で規制し、それに違反すれば、制裁を科すという構えである。
 近代西欧諸国における憲法の制定は、専制主義に対する抵抗の所産である。この専制主義への抵抗の過程で発生し発達したのが、自由主義(リベラリズム)と民主主義(デモクラシー)である。それらは一つに融合し、自由主義的な民主主義(リベラル・デモクラシー)として、近代西洋文明の政治思想の柱となった。

 次回に続く。

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