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2022年01月05日10:26

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民主対専制10〜民主主義において独裁を防ぐ方法

●民主主義の諸相(続き)

・民主主義において独裁を防ぐ方法
 自由主義的な民主主義の国家では、独裁者の出現を防ぐために、多くの場合、権力の集中を防ぎ、行政・立法・司法の三権の分立を行っている。三権分立の仕方は、国によって異なるが、何らかの形で権力が一元化しないように規制している。また憲法や法律で大統領や首相、首長等の権限の範囲を決めている。任期を何年とし、再選の可否と回数を定めている。再選に当たっては、有権者の選挙によって審判を受ける。権力者への批判を行う言論・集会・結社・出版等の自由を保障している。また、地位を利用した特権を禁止している。罷免(リコール)の制度を定めている。
 ただし、民主主義の国家においても、権力への規制は完全なものではない。規制に不満を持つ権力者は、不正な手段で憲法を変えたり、強権的に憲法を停止したりするなどして、自らの権力を維持・拡大しようとする。権力欲の強い指導者は、全ての権力を掌握しようと試みる。武力を行使して全権を掌握して権力の拡大や永続化を図る。独裁者の出現や専制主義への転換は、そのようにして起こり得る。いかなる法制度も、それを無視する力が働く時には、無効化される。力には力で対抗するしかない。そのことを忘れ、法治すなわち法の支配のみに頼る民主主義国家は、民主主義を失うことになる。

・民主主義の理想と現実
 すべての人が平等の権利を以って政治に参加することは、一つの理想である。その理想に近い政治体制が民主主義と言える。民主主義をよいものとする考え方に立つと、いかなる専制主義より民主主義が優ると判断される。
 だが、民主主義は、古代ギリシャにおいては愚民政治ないし暴民支配を意味するものとして、しばしば嫌悪された。また、民主主義から独裁制が誕生した。近代社会においても、民主主義が愚民政治に陥ると、そこから独裁者が生まれた。それゆえ、民主主義は善政を生むこともあれば、悪政に陥ることもあり得ることに注意しなければならない。
 実は近年、世界の国々で民主主義への「幻滅」が広がっているという現象が見られる。米調査機関ピュー・リサーチ・センターが2020年2月に発表した調査の結果では、34カ国で平均52%の人々が、うまく機能しない自国の民主主義に「不満だ」と回答した。日本でも53%が「不満だ」と回答した。
 民主主義への不満には、様々なものが考えられる。間接民主制に対して直接民主制の拡大を求める不満、マスメディアが大衆の意識操作をして政治を左右していることへの不満、その背後でメディアや政治家を動かしている巨大金融資本の支配への不満、政策の速やかな実現のために権力の集中を求める不満等である。その不満は、しばしば実力の行使や専制主義への期待という形で表れる。

・デモクラシーの制度と目的
 民主主義と訳されるデモクラシーは、民衆が政治に参加する制度である。わが国では、かつてデモクラシーを「民本主義」とも訳していた。
 民本主義という訳語は、明治末年から使われはじめたが、一躍脚光を浴びるようになったのは、大正デモクラシーの時代に活躍した吉野作造による。吉野は1916年(大正5年)の『憲政の本義を説いて其有終の美を済(な)すの途を論ず』という論文で、次のように書いた。
 「デモクラシーなる言葉は、…一つは『国家の主権は法理上人民に在り』という意味に、またもう一つは『国家の主権の活動の基本的の目標は政治上人民に在るべし』という意味に用いられる。この第二の意味に用いらるる時に、我々はこれを民本主義と訳するのである」と。
 デモクラシーの語を第一の意味で訳したのが民主主義であり、主権在民を意味する。これに対し、第二の意味で訳したのが民本主義であり、吉野は次のように述べる。「いわゆる民本主義とは、法律の理論上主権の何人に在りやということは措いてこれを問わず、ただその主権を行用するに当って、主権者は須らく一般民衆の利福並びに意向を重んずるを方針とす可しという主義である」と。
 こういう意味での民本主義は、わが国の伝統だった。『古事記』によると、初代神武天皇は、国民を「大御宝(おおみかたら)」と呼んで大切にし、吉野のいう「一般民衆の利福並びに意向を重んずる」政治に努めた。その精神を受け継いだ仁徳天皇は「百姓 (ひゃくせい=国民) を以て本と為す」とし、民を本とするという国民本位の民本主義の政治を行っていた。こうした伝統を日本的なデモクラシーと呼ぶことができる。
 今日一般に民主主義と訳されるデモクラシーは、民衆の政治参加の制度を意味するが、デモクラシーにおいて重要なのは、制度そのものより、国民の安寧と幸福の実現という政治の目的にある。その点から見るならば、日本の伝統である民本主義という意味のデモクラシーは、現代世界において制度としての民主主義が真に目指すべきものと言えよう。

 次回に続く。

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