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2021年05月17日08:46

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「一帯一路」の地政学3〜共産中国登場までの世界の動き

●共産中国登場までの世界の動き

 私は、中国は米英独ソ等で発達した地政学を取り入れ、さらに独自に発達させて、世界覇権獲得のための国家戦略を策定していると推測する。中国は1990年代から急速に成長した経済力を以って猛烈な軍拡を行っている。それは、共産党による国家戦略があるからである。戦略目標を達成するために、陸上空間・海洋空間・航空宇宙空間・情報空間の各空間における軍事力の増強を図ってきている。そして、その国家戦略の一環をなすのが、「一帯一路」構想であると私はとらえる。
 共産中国では、人民解放軍が所有・経営する企業が多くある。また民間企業は、すべてに共産党の組織が置かれており、共産党の管理下にある。それゆえ、経済活動と政治的・軍事的な活動は一体のものである。自由主義の国家とは、経済活動の仕組みが全く違う。「一帯一路」構想における経済活動も、政治的・軍事的な活動と切り離せない。
 私の見るところ、中国の国家戦略は二重構造となっており、土台が軍事的な戦略であり、上部が経済的な戦略である。「一帯一路」構想の根底には軍事的な戦略があり、「一帯一路」構想は軍事的な戦略が見えないように表層を覆ったものと思う。「一帯一路」構想は、このような二重構造の上部をなし、経済的手段を重視する地経学を活用して、広域経済圏を構築するものと見ることができる。
 広域経済圏の構築という発想は、米ソ冷戦の終結後、グローバリゼイションが進行して世界が一つの市場になったことに逆行しているという見方があるだろう。また、1930年代に列強が取ったブロック経済の政策に通じるようでもある。さらに言えば、19世紀末から列強が推進した帝国主義の政策を再現するものとも考えられる。そこで、この点の検討のために、19世紀末から今日にかけての世界の歴史を概観しよう。この期間はまた地政学が登場し、発達した時代でもある。
 資本主義諸国は、19世紀末から、地理的な研究を基にして、植民地の獲得を競い合った。アメリカのマハンは、自国を海洋国家として強大化するための地政学を打ち出した。各国の植民地獲得の競争が高じて、第1次世界大戦が起こった。先発資本主義国のイギリス・フランス等が各地に植民地を拡大したのに対し、後発資本主義国のドイツは再分割を挑んだ。そして、敗れた。大戦の末期に、ロシアで共産主義革命が起こり、ソ連が建設された。資本主義国は、共産革命を防止する必要を生じた。そうした状況で行われたベルサイユ講和会議で、戦勝国は戦後処理を決定した。イギリスのマッキンダーは、強大な大陸国家の出現を防ぐための地政学的な理論を提供した。それが、第1次大戦後の世界秩序の形成や国際連盟の創設に生かされた。
 だが、この戦後体制の矛盾に、第2次世界大戦の可能性がはらまれていた。英仏のドイツへの報復とそれへのドイツの反発、「持てる国」と「持たざる国」との格差拡大等がそれである。その上で、国際社会を揺るがした決定的な出来事は、1929年の世界恐慌だった。恐慌はアメリカに発し、世界に激震が走った。かつてない経済危機に対処するため、イギリス、フランス等がブロック経済を進めた。そのことが、列強の激しい対立を生み出した。ドイツに出現したヒトラーは、ハウスホーファーの地政学を取り入れて、生存権の獲得・拡大を図った。だが、その野望は英米ソ等による連合国によって打ち砕かれた。ドイツと同盟を結んだ日本とイタリアも大敗した。
 世界恐慌とそれによるブロック経済が2度目の大戦を引き起こす大きな要因になった。その教訓によって、第2次大戦の最中から、軍事面では連合国を恒常的な国際機関(いわゆる国際連合)とする組織作りを行うとともに、経済面でも各国が協調し合う新しい体制作りが模索された。その新しい国際経済体制は、2度の大戦を通じて圧倒的な軍事力・経済力を持つに至ったアメリカの主導によって形成された。それがブレトン・ウッズ体制またはIMF=GATT体制と呼ばれるものである。
 第2次大戦を通じて、ソ連は東欧各国に共産主義政権を樹立し、傘下に置いた。ブレトン・ウッズ体制に参加せず、東欧を組み込んだ一つの経済圏を形成した。それは、大戦前の経済ブロックより以上に自己完結的な経済圏となった。スターリンは、ハウスホーファーの地政学を学び、世界島(ユーラシア大陸・アフリカ大陸)の心臓地帯(ハートランド)に強大な大陸国家(国家連合体)を創ったともいえる。
 アジア・アフリカでは、大戦の途中から民族解放運動が起こり、大戦後に独立国が各地で勃興した。欧米諸国は、植民地を支配する政策を止め、新興国を国際連合やブレトン・ウッズ体制に加入させ、国際社会に組み込んだ。一方、ソ連は、北朝鮮・ベトナム・キューバ等に影響力を広げ、自らが支配する経済圏に組み込んだ。第2次大戦後の世界は、米ソを中心とするブロック経済で二分されたともいえる。この経済体制のもとに米ソが対峙したのが、いわゆる冷戦である。米ソ冷戦は、核兵器が出現した時代において、自由主義・資本主義の国々と統制主義・共産主義の国々が軍事的な対立を続ける体制だった。
 こうした展開をする世界に登場したのが、共産中国である。中国共産党は、ソ連共産党の指導の下にコミンテルンの中国支部として、今から100年前、1921年に結成された。シナにおける国共内戦を制した中国共産党は、1949年に中華人民共和国を建国した。中国は、ソ連の影響圏の一部となった。

 次回に続く。

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