mixiユーザー(id:525191)

2020年09月20日10:07

33 view

人種差別〜毛沢東思想とマルクーゼ理論の合体

●毛沢東思想とマルクーゼ理論の合体

 1960〜70年代の米国では、白人の極左翼と黒人の共産主義者・黒人民族主義者の連携が生じた。彼らはともに毛沢東の思想の影響を強く受けていた。彼らは、インディアンの政治団体やアジア、アフリカ、ラテン・アメリカの諸民族との連帯を図るとともにフェミニズムやLGBTの団体とも連帯するようになった。武装闘争を扇動する毛沢東主義と、先進国の女性や性的少数者の権利拡大運動との間には、距りがある。だが、戦後の米国で、その隔たりを埋め、両者を結びつける理論を打ち出したのが、ヘルベルト・マルクーゼである。
 マルクーゼは、ドイツの社会主義者のグループであるフランクフルト学派の一員である。フランクフルト学派は、社会主義の実現の妨げになるものとして、キリスト教・家族・道徳・愛国心等を徹底的に批判した。批判は、西洋文明そのものにまで及んだ。フランクフルト学派にはユダヤ人が多く、1930年代からナチスが台頭すると、彼らは米国に亡命し、戦略情報局(OSS)で大衆操作の研究に参加した。彼らの最左派だったのが、マルクーゼである。
 第2次世界大戦後、米国をはじめとする先進国では、経済発展によって労働者階級が豊かな生活を送るようになって体制化した。彼らが革命の主体となって、共産主義革命を起こし得る状況ではなくなった。その状況において、マルクーゼは、権力奪取の政治革命より、西洋文明の文化を根底から変える文化革命に重点をおいた。そして、「来るべき文化革命でプロレタリアートの役を演じるのは誰か」と問うた。マルクーゼが候補に挙げたのは、若者の過激派、黒人運動家、フェミニスト、同性愛者、社会的孤立者、第三世界の革命家などだった。先進国の労働者階級に代わって西洋文化を破壊するのは彼らだというのである。
 共産主義と黒人や女性、性的少数者等の権利拡大運動との関係を知るには、共産主義の歴史と理論を知る必要がある。その点については、拙稿「文化革命型の『白い共産主義』の脅威」をご参照願いたい。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion07d.htm
 マルクーゼの思想は、1960年代のアメリカで、学生や左翼知識人に浸透していった。彼の思想にはまったアメリカの学生たちは、ベトナム戦争の反戦運動を行いながら、キリスト教の価値観や道徳に反抗し、セックスとドラッグに興じた。この「性革命」「ドラッグ革命」に続いて、黒人の公民権運動が高揚した。黒人が公民権を求めるのを見て、白人の女性たちも権利の拡大を要求し、ウーマン・リブの女性解放運動が起こった。こうした中で最も過激な活動を行なったのが、白人によるザ・ウェザー・アンダーグランドと黒人によるブラックパンサー党だったのである。
 マルクーゼの思想は、アメリカから西欧・日本に伝播した。マルクーゼの影響を象徴的に表わすことがある。1968年(昭和43年)、フランスのパリで5月革命が起った。この時に活動した学生・知識労働者の運動は、三M革命といわれる。三Mとは、「マルクス・マオ(毛沢東)・マルクーゼ」である。マルクス、毛沢東と並ぶほど、マルクーゼが強い影響を与えていたのである。
 私は、1960年代後半から1970年代初めにかけて、共産主義の影響を受けた。その後、数年間、自身が感染した共産主義を克服するために苦闘した。その中で最も厄介なものと感じたのが、マルクーゼの理論だった。彼の理論は西洋文明を根本的に批判するとともに、工業化の進んだ先進国の知識集約的な管理社会を批判するものでもあったので、日本を含む先進国の学生・知識人の共感を呼ぶ点があった。
 そうしたマルクーゼの理論は、全く対照的な毛沢東思想と化学反応を起こした。毛沢東思想は、革命の主体を先進国のプロレタリアート(無産階級の賃金労働者)ではなく、発展途上国の農民とする。従来のマルクス主義の革命理論とは異質な思想である。だが、マルクーゼが「来るべき文化革命でプロレタリアートの役」を演じる者として、黒人、第三世界の革命家、フェミニスト、同性愛者等を挙げたことによって、毛沢東思想とマルクーゼ理論が合体した。「マルクス・マオ(毛沢東)・マルクーゼ」の3Mが極左翼の旗印になったわけである。
 毛沢東はマルクスの「万国の労働者、団結せよ」というスローガンに替えて、「万国の労働者・被抑圧民族団結せよ」と呼びかけた。また、「銃口から権力は生まれる」と唱え、武装闘争によって権力を奪取する方法を説いた。この思想が先進国で革命運動を行なう極左翼や黒人過激派等に強い影響を与えた。革命を起こし得る状況がなくとも、武装闘争を行なうことで、その状況を作り出すという極左冒険主義の思想を生み出した。そのような思想的な展開において、マルクーゼの理論は重要な役割をした。
 共産主義の革命運動を行なうには、思想や理論だけでなく、活動の資金や組織づくりの方法、運動の技術が必要である。1960〜80年代において、それらを主に提供したのはソ連だった。ソ連は、各国の様々な政治団体・民族団体に運動資金を提供し、活動家たちに組織づくりの方法や運動の技術を教育した。共産中国がソ連に次いで、こうした支援を行なった。現実の社会主義国家のあり方を批判していた者たちも、資金と方法と技術を得られることから、ソ連や中国、北朝鮮、キューバ等との関係を深めた。
 ソ連の崩壊した1990年代以降は、共産中国が旧ソ連に替わって中心となり、資金提供や活動家の育成を行なってきた。世界各国に居る中国人が共産党の指示のもとに、こうした工作を担ってきた。その工作の拡大・深化から、今日の習近平政権とBLM等の諸団体の連携が生み出されたと見ることができる。

 次回に続く。

************* 著書のご案内 ****************

 『人類を導く日本精神〜新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
 『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1

************************************
2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する