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2020年09月07日10:31

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仏教50〜儒家と儒教、孔子

●儒家と儒教

◆儒家・儒教の定義・名称
 諸子百家のうち、最も早く現れたのは儒家である。儒家は、春秋時代に孔子が説いた思想をもとにして成立した学派である。
 儒家の思想は、家族的・氏族的かつ政治的な倫理思想を中心とするが、天への信仰や祖先崇拝などの宗教的な教義や儀礼を含む。儒家が宗教的な性格を持つことを強調する時は、儒教という。外来の仏教に対して、4世紀初め頃、儒教という語が生じたと見られる。学問的な面を強調する時は、儒学ともいう。儒の文字は、「水にぬれて柔らかいひげ」を表す。そこから、「性行のしっとりとして柔和な人、文物にたずさわる穏やかな人」(『漢字源』)を意味する。開祖の名をとって孔子教ということもあり、英語で儒教を Confucianism というのは、孔子を Confucius と呼ぶことによっている。
 本稿では、文脈によって、儒家と儒教を併用する。

◆儒教史の概要
 春秋時代末期、孔子を指導者として儒家が成立した。これに刺激を受けて、墨家・道家・名家・法家・陰陽家等の諸子百家が現れた。儒家は、孔子の死後、門弟がその教説を受け継ぎ、戦国時代に孟子、荀子等が出て、諸子百家のなかで最も有力な学派として成長した。
 儒家・儒教は、漢の武帝の時代、紀元前136年に国教となった。それ以後、20世紀初め、1912年に清が滅亡するまで、2000年以上にわたって、大多数の王朝に支持され、シナ文明の統治思想として大きな影響を及ぼしてきた。一時的には道教や仏教が国教となった王朝もあったが、儒教の影響力は遥かに大きく、今日に至るまで、シナ文明の精神的中核となっている。
 儒教は朝鮮半島、日本、東南アジア諸地域等にも伝わり、大きな影響を与えてきた。これらの地域を儒教文化圏と呼ぶことがある。

◆孔子
 儒教の開祖・孔子は、春秋時代末期の人で、姓は孔、名は丘、字は仲尼(ちゅうじ)という。生年は紀元前551年、没年は前479年と推定される。
 孔子が生きた時代は、周王朝の支配体制が崩れ、諸侯が対立抗争する動乱の時代だった。孔子は、堯・舜・禹・湯王・文王・武王・周公旦等を尊崇した。乱世を治めるためには、周代に定められた礼を回復することが必要だと説いた。この点で、孔子は、失われた伝統を復興しようとする復古的な指導者である。
 孔子が礼の回復のために説いたのが、仁である。仁とは忠恕である、と孔子はいう。「吾が道は一以てこれを貫く。…夫子の道は忠恕のみ」(『論語』と。「忠」はまごころ、「恕」は思いやりである。仁とは克己復礼であるともいう。「顔淵、仁を問う。子の曰く、己を克(せ)めて礼に復るを仁と為す」(『論語』)と。仁とは、親への孝、兄弟の孝悌を本にするものだともいう。「君子は本を務む。本立ちて道生ず、孝弟なる者は其れ仁の本たるか」と。この点では、孔子は、人間の内面を哲学的に掘り下げた道徳の指導者である。そして、自己を修める倫理が家族生活の倫理のもとであり、また、家族的な倫理が国家・天下を統治する原理になることを説いた。
 孔子は、職業としては、葬礼を行う巫術者の集団の指導者だったと見られる。すなわち宗教的な祭儀の専門家である。その姿勢は、謙虚かつ敬虔である。その一方で、彼は、天を恐れる原始的・迷信的な信仰を脱して、合理的かつ人間中心的な姿勢を示してもいる。孔子は「民の義を務め、鬼神(きじん)を敬してこれを遠ざく」と語った。そこに、紀元前6世紀〜前5世紀のシナ文明における孔子の革新性がある。その点で、紀元前5世紀〜前4世紀の古代ギリシャ文明におけるプラトンと、しばしば比較される。
 孔子は、諸国を回って、為政者に自らの思想を説いた。だが、孔子の生前、彼の思想はほとんど受け入れられなかった。そこで晩年の孔子は、後進の教育に力を入れた。また、周公の理想を伝える『書経』『詩経』を編集したとされる。これらは、儒教の聖典となった。
 孔子のもとに、その思想を学び、支持する者たちが集まり、儒家の学派にして儒教の教団でもある集団が形成された。門弟には優秀な者が70人ほどいた。なかでも顔淵、閔子騫(びんしけん)、冉(ぜん)伯牛、子貢、子路、子夏等の10人は、孔門十哲と呼ばれる。門弟たちは、孔子の言行を書物にまとめた。それが、『論語』である。
 孔子の死後、門弟たちは各地に広がり、教勢を拡大していった。この儒家・儒教に刺激を受けて、諸子百家と呼ばれる様々な学派が出現した。儒家・儒教は他の学派と論争し、また他からも影響を受けつつ発展を続けた。やがて漢の国教となり、それ以降、多くの歴代王朝で重んじられることになった。

 次回に続く。

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