mixiユーザー(id:525191)

2020年08月30日08:27

37 view

仏教47〜シナ文明における仏教史の概要

◆シナ文明における仏教史の概要
 仏教は、インド文明において、紀元前3世紀、マウリヤ朝のアショーカ王の保護の下にインド全域に広がった。やがて西北インドから中央アジアを経由して、紀元1世紀には、シナの中原地方に伝来した。
 シナ文明への仏教の伝来の時期は、後漢の第2代皇帝・明帝の時代、紀元後67年が通説である。だが、それ以前にも、シナでは西域と呼ぶ中央アジア諸国との交渉を通じて、仏教の影響があったと見られる。伝道は、武力による侵攻・支配に伴うものではなく、宗教・文化の伝播として行われた。
 仏教は、インドの宗教であり、現世否定を基本とする。現世における不老長生を希求し、先祖の葬祭儀礼を重んじるシナ文明にとっては、異質の宗教思想である。このため、シナにおける仏教伝道の歴史は、文明間における異文化の衝突となった。
 仏教は、漢字を用いた翻訳を通じて受容された。シナには、すでに儒家・道家・法家等の思想が発達していたので、仏教はシナ土着の思想を土壌として理解された。受容と研究と実践の過程で、自ずと仏教はその思想の影響を受け、仏教のシナ化が起こった。さらに、仏教の摂取が進むと、シナ独自の仏教が出現した。
 後漢末から魏晋の時代には、インド仏教の空と、道家に基づく老荘思想の無の類似性が自覚され、仏教の思想や用語をシナの伝統的な思想・用語にあてはめて解釈することが行われた。ここに生まれたシナ独自の仏教を、格義仏教という。これがその後のシナ仏教を性格づけた。
 インドでは仏教の教義は歴史的に段階を踏んで発展したが、インドの近隣諸国では、歴史的に発展した各段階の教義を、全体としてまとめて、教義として受け取ることとなった。チベットでは、初期仏教から密教にいたる様々な教えを一つの体系のもとに統合するという試みがされたが、シナでは、経典の評価付けを行って特定の経典を重視する宗派が形成された。『法華経』を中心経典とする天台宗、『華厳経』を中心経典とする華厳宗等である。これらの宗派では、高度な教学が発達した。
 こうした学問重視的な宗派が発達する一方、特定の行法にしぼって実践する実践中心的な宗派が出現した。インド伝来の浄土思想が体系化され、仏教の主要な潮流を形成して、民衆の信仰を集めた。また、座禅の実践に徹する禅宗が生まれ、浄土信仰と並ぶ潮流となった。また、シナでは、インドではヒンドゥー教に吸収された密教が、シナでは仏教の宗派として確立され、発展した。
 だが、シナ文明の精神的な中核は、儒教であり続けた。古代からシナの政治思想の基礎となった儒教は、法家の統治思想と融合し、儒仏道三教の合一を進めて、シナ文明の精神的中核としての機能を発揮し続けた。
 儒教は、家族的・氏族的な宗教であり、また政治的な宗教である。現世志向が強く、主に集団救済を目的とする。そのため、個人の救済や来世の救済を求める人間の欲求には、よく応えられない。逆に、仏教は個人の救済や来世の救済を主たる目的としており、儒教では満たされない欲求に応えるものとして、シナ社会に浸透し得る可能性を持っていた。シナの仏教は、儒教の道徳を受け入れ、その思想に基づく偽経がつくられた。これも、仏教のシナ化を示す動きだった。
 シナ文明には儒教では満たされない欲求に応える宗教として、道教が発達した。道教は、儒教もそうだが、仏教と異なり、輪廻転生を明確には信じず、単生説に立つ。人生を楽しみ、現世肯定的で、俗世間を離れて、天地大自然と一体化した生き方に努め、不老長生を目指す。仏教が本来、一切皆苦を説き、現世否定的で、輪廻世界からの解脱を目指すのとは、対照的である。シナ人の多くは、輪廻転生を信じず、解脱の必要性を切実に感じない。そうしたシナ人が仏教に主に期待するものは、現世利益と心の平安、死後の安心の保証ということになった。
 インドから中央アジアを経てシナに伝わった仏教は、その地で独自の発達をし、シナからさらに朝鮮、日本、ベトナムへ伝わった。この経路で伝播した仏教を北伝仏教という。北伝仏教は大乗仏教や密教を主とするが、部派仏教の聖典も伝えられた。
 シナ文明は、仏教とともに、儒教・道教を東アジアや東南アジアの一部に伝えた。こうして伝わった仏教は、儒教・道教の影響を受けたり、それらと混交したりしたシナ独自の仏教だった。シナ仏教は、特に日本文明において一層の発達をした。また、同時に様々な思想・宗派が保存されることにもなった。

 次回に続く。

************* 著書のご案内 ****************

 『人類を導く日本精神〜新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
 『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1

************************************
2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する