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2018年05月26日08:49

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キリスト教51〜イエスの活動とキリスト教の誕生

●イエスの活動とキリスト教の誕生

 ナザレのイエスが誕生したのは、パレスチナがローマ帝国の支配を受けている時代である。イエスの誕生は、紀元前7年から紀元後4年の間と考えられる。バプテスマのヨハネの洗礼を受けたイエスは、紀元30年前後にユダヤ教を改革する独自の教えを説いた。イエスはユダヤの最高法院で裁かれ、ローマ領ユダヤの総督ピラトによって死刑を宣告された。十字架刑に処せられて死んだのは、紀元後30年から32年の間と推定されている。
 その生涯については、概要の教祖の項目に書いたので、ここでは省略する。歴史的な人物としてのイエスの実像に迫ることは、極めて難しい。福音書は、伝承に基づくものであり、伝承がどこまで事実を伝えているかの検証は困難である。しかも福音書は客観的な事実のみを書こうとしたのではなく、福音書家らの信仰内容を表現した部分が多くあると考えられる。そこに記されたイエスの言葉にすら、彼らの思想が混じっている。
 イエスの死後、彼の弟子たちがイエスを救世主と信じ、その教えを広めた。それがキリスト教となった。エルサレムで最初のキリスト教の信徒共同体、原始キリスト教団が成立したのは、弟子たちによるイエスの復活信仰が確立したのと同時と考えられる。
 また、より具体的に言えば、聖霊降臨がキリスト教の始まりと言える。『使徒言行録』に、次のことが記されている。「五旬祭の日が来て、一同が一つになって集まっていると、突然、激しい風が吹いて来るような音が天から聞こえ、彼らが座っていた家中に響いた。そして、炎のような舌が分かれ分かれに現れ、一人一人の上にとどまった。すると、一同は聖霊に満たされ、霊が語らせるままに、ほかの国々の言葉で話した」(使徒言行録2章1〜4節)
 これが聖霊降誕である。聖書でいう霊とは、ヘブライ語の「ルアハ」(息吹、風)から来ており、天地万物を造り、生かす神の生命の力、働きのことを意味する。聖霊の降誕によって、使徒たちは、不思議な能力を発揮するようになり、預言や癒しのわざをしたり、異言を語ったりしたことが、『使徒言行録』に記されている。この記述が何らかの事実を伝えているとすれば、キリスト教はイエスだけでなく使徒たちもいくばくか奇跡を起こすことができたことにより、その神秘な働きによって信者を獲得していったと考えられる。
 キリスト教は、最初ユダヤ教の一宗派として存在していた。サドカイ派、ファリサイ派、エッセネ派の主な三つの宗派に、新たな宗派が加わったような形で始まったのである。いわばユダヤ教イエス派である。
 キリスト教の集団には、最初期にすでに複数の小集団があったことが、パウロの手紙などから分かる。そこで指導的立場にあったのは、イエスの弟子と親族を中心に形成されたエルサレム教会だった。
 キリスト教はエルサレムで始まり、シリア、小アジア半島、バルカン半島にあるアンティオキア、エペソ、ピリピ、テサロニカなどの都市を経て、ギリシャのアテネに至った。アテネは、バルカン半島のコリント、クレタ島のクレタと並んで、初期キリスト教の重要な拠点となった。キリスト教はこれらの東地中海の諸都市をつないで、帝都ローマに入った。この間、キリスト教はギリシャ文化圏を改宗させ、今日に至るまでこの地域の主要な宗教となっている。
 キリスト教が東から伝播していったローマ帝国では当時、エジプト、シリア、小アジア、ペルシャ等のオリエント諸地方に由来する宗教が流行していた。それらの教えの中心には、神話に根差す神々の物語があった。それらの神々は、最初は植物の姿をし、秋になると死に、春に再生する。エジプトの神オシリス、フリギアの神アティス、シリアの神アドニスなどがその代表的なものである。死んで復活した後に、不死に達する神々である。これらの宗教は、農耕文化に基づく植物神または大地の神を信仰するものである。象徴的に言えば、太陽は朝に生まれて、夕方に死に、翌朝に復活する。また季節的には秋から冬にかけて光が弱まり、最も日が短くなる冬至から再び光を強める。いわば、死と復活を繰り返している。ローマ帝国において、イエスの死と復活を信じるキリスト教が宣教を始めたのは、それらの宗教の流行と同時代だった。キリスト教は、多種多様な外来の宗教の一つに過ぎなかった。
 当時ユダヤ教は、ローマ帝国の認可を受けた宗教として、帝国内の各都市にあったユダヤ人の共同体であるディアスポラで活動していた。キリスト教もこの各地のディアスポラを中心に活動した。しかし、ユダヤ教との信条の違いが明らかになると、ユダヤ教の他宗派から反感を買うようになった。
 キリスト教がユダヤ教から離反すると、ローマ帝国は、帝国の認可のないものとしてキリスト教を迫害し始めた。

 次回に続く。

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