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2015年12月02日09:47

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人権233〜人権宣言は「発達する人間的な権利」を宣言

●「人権及び基本的自由」を列挙

 前文に続いて、「宣言」は、「人権及び基本的自由」を30条にわたって列挙している。外務省の仮訳文を掲載する。

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第1条 すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。

第2条
1 すべて人は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、門地その他の地位又はこれに類するいかなる事由による差別をも受けることなく、この宣言に掲げるすべての権利と自由とを享有することができる。
2 さらに、個人の属する国又は地域が独立国であると、信託統治地域であると、非自治地域であると、又は他のなんらかの主権制限の下にあるとを問わず、その国又は地域の政治上、管轄上又は国際上の地位に基づくいかなる差別もしてはならない。

第3条 すべて人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する。

第4条 何人も、奴隷にされ、又は苦役に服することはない。奴隷制度及び奴隷売買は、いかなる形においても禁止する。

第5条 何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは屈辱的な取扱若しくは刑罰を受けることはない。

第6条 すべて人は、いかなる場所においても、法の下において、人として認められる権利を有する。

第7条 すべての人は、法の下において平等であり、また、いかなる差別もなしに法の平等な保護を受ける権利を有する。すべての人は、この宣言に違反するいかなる差別に対しても、また、そのような差別をそそのかすいかなる行為に対しても、平等な保護を受ける権利を有する。

第8条 すべて人は、憲法又は法律によって与えられた基本的権利を侵害する行為に対し、権限を有する国内裁判所による効果的な救済を受ける権利を有する。

第9条 何人も、ほしいままに逮捕、拘禁、又は追放されることはない。

第10条 すべて人は、自己の権利及び義務並びに自己に対する刑事責任が決定されるに当っては、独立の公平な裁判所による公正な公開の審理を受けることについて完全に平等の権利を有する。

第11条
1 犯罪の訴追を受けた者は、すべて、自己の弁護に必要なすべての保障を与えられた公開の裁判において法律に従って有罪の立証があるまでは、無罪と推定される権利を有する。
2 何人も、実行の時に国内法又は国際法により犯罪を構成しなかった作為又は不作為のために有罪とされることはない。また、犯罪が行われた時に適用される刑罰より重い刑罰を課せられない。

第12条 何人も、自己の私事、家族、家庭若しくは通信に対して、ほしいままに干渉され、又は名誉及び信用に対して攻撃を受けることはない。人はすべて、このような干渉又は攻撃に対して法の保護を受ける権利を有する。

第13条
1 すべて人は、各国の境界内において自由に移転及び居住する権利を有する。
2 すべて人は、自国その他いずれの国をも立ち去り、及び自国に帰る権利を有する。

第14条
1 すべて人は、迫害を免れるため、他国に避難することを求め、かつ、避難する権利を有する。
2 この権利は、もっぱら非政治犯罪又は国際連合の目的及び原則に反する行為を原因とする訴追の場合には、援用することはできない。

第15条
1 すべて人は、国籍をもつ権利を有する。
2 何人も、ほしいままにその国籍を奪われ、又はその国籍を変更する権利を否認されることはない。

第16条
1 成年の男女は、人種、国籍又は宗教によるいかなる制限をも受けることなく、婚姻し、かつ家庭をつくる権利を有する。成年の男女は、婚姻中及びその解消に際し、婚姻に関し平等の権利を有する。
2 婚姻は、両当事者の自由かつ完全な合意によってのみ成立する。
3 家庭は、社会の自然かつ基礎的な集団単位であって、社会及び国の保護を受ける権利を有する。

第17条
1 すべて人は、単独で又は他の者と共同して財産を所有する権利を有する。
2 何人も、ほしいままに自己の財産を奪われることはない。

第18条 すべて人は、思想、良心及び宗教の自由に対する権利を有する。この権利は、宗教又は信念を変更する自由並びに単独で又は他の者と共同して、公的に又は私的に、布教、行事、礼拝及び儀式によって宗教又は信念を表明する自由を含む。

第19条 すべて人は、意見及び表現の自由に対する権利を有する。この権利は、干渉を受けることなく自己の意見をもつ自由並びにあらゆる手段により、また、国境を越えると否とにかかわりなく、情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由を含む。

第20条
1 すべての人は、平和的集会及び結社の自由に対する権利を有する。
2 何人も、結社に属することを強制されない。

第21条
1 すべて人は、直接に又は自由に選出された代表者を通じて、自国の政治に参与する権利を有する。
2 すべて人は、自国においてひとしく公務につく権利を有する。
3 人民の意思は、統治の権力を基礎とならなければならない。この意思は、定期のかつ真正な選挙によって表明されなければならない。この選挙は、平等の普通選挙によるものでなければならず、また、秘密投票又はこれと同等の自由が保障される投票手続によって行われなければならない。

第22条 すべて人は、社会の一員として、社会保障を受ける権利を有し、かつ、国家的努力及び国際的協力により、また、各国の組織及び資源に応じて、自己の尊厳と自己の人格の自由な発展とに欠くことのできない経済的、社会的及び文化的権利を実現する権利を有する。

第23条
1 すべて人は、勤労し、職業を自由に選択し、公正かつ有利な勤労条件を確保し、及び失業に対する保護を受ける権利を有する。
2 すべて人は、いかなる差別をも受けることなく、同等の勤労に対し、同等の報酬を受ける権利を有する。
3 勤労する者は、すべて、自己及び家族に対して人間の尊厳にふさわしい生活を保障する公正かつ有利な報酬を受け、かつ、必要な場合には、他の社会的保護手段によって補充を受けることができる。
4 すべて人は、自己の利益を保護するために労働組合を組織し、及びこれに参加する権利を有する。

第24条 すべて人は、労働時間の合理的な制限及び定期的な有給休暇を含む休息及び余暇をもつ権利を有する。

第25条
1 すべて人は、衣食住、医療及び必要な社会的施設等により、自己及び家族の健康及び福祉に十分な生活水準を保持する権利並びに失業、疾病、心身障害、配偶者の死亡、老齢その他不可抗力による生活不能の場合は、保障を受ける権利を有する。
2 母と子とは、特別の保護及び援助を受ける権利を有する。すべての児童は、嫡出であると否とを問わず、同じ社会的保護を受ける。

第26条
1 すべて人は、教育を受ける権利を有する。教育は、少なくとも初等の及び基礎的の段階においては、無償でなければならない。初等教育は、義務的でなければならない。技術教育及び職業教育は、一般に利用できるものでなければならず、また、高等教育は、能力に応じ、すべての者にひとしく開放されていなければならない。
2 教育は、人格の完全な発展並びに人権及び基本的自由の尊重の強化を目的としなければならない。教育は、すべての国又は人種的若しくは宗教的集団の相互間の理解、寛容及び友好関係を増進し、かつ、平和の維持のため、国際連合の活動を促進するものでなければならない。
3 親は、子に与える教育の種類を選択する優先的権利を有する。

第27条
1 すべて人は、自由に社会の文化生活に参加し、芸術を鑑賞し、及び科学の進歩とその恩恵とにあずかる権利を有する。
2 すべて人は、その創作した科学的、文学的又は美術的作品から生ずる精神的及び物質的利益を保護される権利を有する。

第28条 すべて人は、この宣言に掲げる権利及び自由が完全に実現される社会的及び国際的秩序に対する権利を有する。

第29条
1 すべて人は、その人格の自由かつ完全な発展がその中にあってのみ可能である社会に対して義務を負う。
2 すべて人は、自己の権利及び自由を行使するに当っては、他人の権利及び自由の正当な承認及び尊重を保障すること並びに民主的社会における道徳、公の秩序及び一般の福祉の正当な要求を満たすことをもっぱら目的として法律によって定められた制限にのみ服する。
3 これらの権利及び自由は、いかなる場合にも、国際連合の目的及び原則に反して行使してはならない。

第30条 この宣言のいかなる規定も、いずれかの国、集団又は個人に対して、この宣言に掲げる権利及び自由の破壊を目的とする活動に従事し、又はそのような目的を有する行為を行う権利を認めるものと解釈してはならない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 第1条は、「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない」と述べている。
 人権を正当化する根拠に全く言及することなく、宣言は端的にこのように断言している。なぜこのように言いうるのかについては、何の説明もない。
続いて第2条の1項では、「すべて人は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、門地その他の地位又はこれに類するいかなる事由による差別をも受けることなく、この宣言に掲げるすべての権利と自由とを享有することができる」と規定している。
 同条2項は、「さらに、個人の属する国又は地域が独立国であると、信託統治地域であると、非自治地域であると、又は他のなんらかの主権制限の下にあるとを問わず、その国又は地域の政治上、管轄上又は国際上の地位に基づくいかなる差別もしてはならない」と禁止している。
 第3条から21条は、すべての人間が享有すべきとするいわゆる市民的、政治的権利を詳細に規定している。すなわち、生存、自由、身体の安全に対する権利、奴隷および苦役からの自由、拷問又は残虐な、非人道的もしくは屈辱的な取り扱いもしくは刑罰からの自由、法のもとに人間として認められる権利、司法的な救済を受ける権利、恣意的逮捕、拘禁または追放からの自由、独立の公平な裁判所による公正な裁判と公開の審理を受ける権利、有罪の立証があるまでは無罪と推定される権利、自己の私事、家族、家庭もしくは通信に対して、恣意的に干渉されない権利、名誉または信用に対して攻撃を受けない権利、そうした攻撃に対する法の保護を受ける権利、移動の自由、避難する権利、国籍を持つ権利、婚姻し、家族を形成する権利、財産を所有する権利、思想、良心および宗教の自由、意見と表現の自由に対する権利、平和的集会と結社の自由に対する権利、政治に参加し等しく公務に就く権利及び選挙に関する権利である。
 第22条から27条は、すべての人間が享有すべきとする経済的、社会的、文化的権利を具体的に定めている。すなわち、社会保障を受ける権利、働く権利、同等の勤労に対し同等の報酬を受ける権利、労働組合を組織し、これに参加する権利、休息および余暇を持つ権利、健康と福祉に十分な生活水準を保持する権利、教育を受ける権利、社会の文化生活に参加する権利である。
 第28条から29条は、社会的および国際的秩序についての権利、権利が制限される場合、社会に対する義務を規定する。また、これらの権利及び自由は、いかなる場合にも、国際連合の目的及び原則に反して行使してはならないと定めている。
 最後に第30条は、「宣言」の規定を権利及び自由の破壊を目的とする活動に従事したり、そのような目的を有する行為を行ったりする権利を認めるものと解釈することを禁じている。

 こうした構成を持つ「宣言」を概観すると、「宣言」は古典的な自由権を主としつつ、20世紀的な人権とされる社会権をも規定していることがわかる。労働権、社会保障を受ける権利、教育を受ける権利、文化を享受する権利等である。それゆえ、「宣言」は、普遍的・生得的な「人間の権利」を定めるものではなく、歴史的・社会的・文化的に発達する「人間的な権利」を定めたものと言わねばならない。世界人権宣言は、「発達する人間的な権利」を宣言した文書である。
 世界人権宣言は、アメリカ独立宣言、フランス人権宣言等に盛られた人権の思想を、新たな文書に表現したものである。それまでの非西洋文明の諸社会から見れば、アメリカ独立宣言やフランス人権宣言等の「人間」や「権利」は、西洋文明の基本要素の一つであるユダヤ=キリスト教を基盤とする特殊な概念だった。また、近代西欧の合理主義が生み出した歴史的・社会的・文化的に特殊な概念だった。アメリカ独立宣言やフランス人権宣言は、他国の植民地人民を対象として想定していない。だが、それらの宣言の思想は文明・国家・民族の違いを超えて受け入れられる一定の伝播性をもっていた。それは根底に近代西欧で論じられた自然法・自然権というある種、普遍性を持ち得る思想に基づいているからである。そして、世界人権宣言は、特定の国民や一部の集団ではなく、人間一般の権利を擁護したものとして発せられた。
 1948年12月10日の時点では、国連総会で「宣言」が採択された。だが、真の意味での人類普遍的な思想は、まだ形成されていない。それが、世界の現状である。その点は、宣言の内容を見ることによって明らかになる。
 なお、後に「国連=連合国」とわが国の関係及び「宣言」採択の状況と目的に関する項目で述べるが、「宣言」の作成・採択は、戦勝国による人権蹂躙の行為は考慮せず、勝者の戦争犯罪は不問にした状態で行われた。崇高な理想と巧みな偽善とが、表裏一体になっていることに留意する必要がある。

 次回に続く。

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