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2021年08月04日10:13

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100年マラソン2〜中国タカ派の100年計画

●中国タカ派の100年計画

 ピルズベリーは24歳から米国のスパイとして働き、CIAに協力し、米国の対中政策に深く関わった。彼は「私は、ニクソン政権(註 在位1969年〜1974年)以来、30年にわたって中国の専門家として政府機関で働いてきた。したがって他の誰よりも中国の軍部や諜報機関に通じていると断言できる」と書いている。
 そうした彼が長年、中国を近くで観察してきた末に確信するようになったのは、「タカ派」の見解が「中国の地政学的戦略の主流」だということである。タカ派とは、ピルズベリーによると「中国のナショナリスト」が自らを呼ぶ名称である。「タカ派の多くは陸海軍の将官や政府の強硬派」だとピルズベリーは述べている。中国にタカ派がいるということは、ハト派もいることになるが、実際そうらしく、長年にわたってタカ派とハト派の主導権争いが行われて来たらしい。
 ピルズベリーは、タカ派について次のように言う。「彼らに会ったことのあるアメリカ人はごくわずかだ。しかし、私は彼らのことをよく知っている。と言うのも、1973年以来、アメリカ政府の指示で、彼らとともに仕事をしてきたからだ」
 そして、ピルズベリーは現在、タカ派の言葉こそが「中国が世界の頂点に立つことを夢見る数億人を代表する、政策立案者の本音なのだ」と書いている。
 ピルズベリーのいうタカ派は、単なるナショナリストではないだろう。極端なナショナリスト、ウルトラ・ナショナリストであり、極端な中華民族主義者だろう。私は、現在の中国の共産主義は「ファシズム的共産主義」であると見ているが、その「ファシズム的共産主義」のもとになる極端な中華民族主義を唱える者たちが、ピルズべリーのいうタカ派だろう。
 中国のタカ派の存在は、米国も世界にも知られていなかった。彼らの思想が表面に現れて来て海外でも知られるようになったのは、数年前のことである。彼らと密に接触してきた極少ない人間の一人であるピルズベリー自身が、彼らの思想の重大性を理解していなかった。
 ピルズベリーが自分の間違いを確信し、親中派から脱し得たのは2013年だが、その3年前の2010年に中国で『中国の夢〜ポスト・アメリカ時代の中国の大国的思考と戦略的位置づけ』という本が出版された。
 著者の劉明福は、人民解放軍の大佐で、人民解放軍の将官を育てる人民解放軍国防大学の指導的学者でもあった。ピルズベリーによると、『中国の夢』と題した本には、どうすれば中国は米国に追いつき追い越し、世界の最強国になれるかが書かれている。それが本の題になっている「中国の夢」である。劉は、ソ連が米国を凌駕できなかった理由を分析し、一章を割いて、中国が採るべき八つの方法を列挙し、「中国の夢」の実現を訴える。劉は、中国が世界のリーダーシップを握るには、国際レベルの軍事力が必要だとし、「21世紀における中国の最大の目標は、世界一の強国になることだ」と言う。
 ここで、劉は「100年マラソン」という言葉を使う。「中国とアメリカの競争は、(略)マラソンのように時間がかかる。そしてマラソンが終わった時、地球上で最も高潔な強国、すなわち中国が勝者となる」と劉は説く。
 ピルズベリーは、この本で初めて「100年マラソン」という記述を見たという。そして、この言葉がピルズベリーの本の原題となっている。
 ピルズベリーによると、「100年マラソン」という表現は中国全土に流布した。極少数のタカ派の間で使われる言葉ではなく、共産中国の知識人・大衆が共通の認識を表わす言葉になったわけである。
 『中国の夢』は、中国では大ベストセラーになった。本書の米国への翻訳・紹介は、原書刊行の数年後だった。これほど重要な書物がすぐには知られなかった。中国の専門家の間にも認識の壁があったからである。
 ピルズベリーは、「2013年の秋に北京を訪れて初めて、わたしは自分たちが間違っていたこと、そして、アメリカの衰退に乗じて、中国が早々とのしあがりつつあることに気づいた」という。その年の3月に習近平が国家主席・国家中央軍事委員会主席に選出され、党・国家・軍の三権を正式に掌握した。ピルズベリーは、その後、ようやく気づいたというのだが、習近平は2012年に中国共産党中央委員会総書記に就任してすぐ、最初のスピーチで、かつて中国の指導者が公式の演説で述べたことのない『強中国夢』(強い中国になるという夢)という言葉を口にしていた。
 ピルズベリーは、「強中国夢」を公言する習近平が中国の最高指導者になってから初めてそれまで考えたことのないシナリオを考えるようになった。「タカ派が、北京の指導者を通じてアメリカの政策決定者を操作し、情報や軍事的、技術的、経済的支援を得て来たというシナリオ」である。
 ピルズベリーは、次のように考えた。「これらのタカ派は、毛沢東以降の指導者の耳に、ある計画を吹き込んだ。それは、『過去100年に及ぶ屈辱に復讐すべく、中国共産党革命100周年』にあたる2049年までに、世界の経済・軍事・政治のリーダーの地位をアメリカから奪取する』というものだ。この計画は、『100年マラソン』と呼ばれるようになった。
 共産党の指導者は、アメリカとの関係が始まった時から、この計画を推し進めてきたのだ。そのゴールは復讐、つまり外国が中国に味あわせた過去の屈辱を『清算』することだ。そうすれば中国は、自国にとって公正な世界、アメリカの支配なき世界を構築できる。そして、第2次世界大戦中のブレトン・ウッズ会議と大戦後のサンフランシスコ会議で土台が築かれた、アメリカを頂点とする世界秩序を修正することができる。タカ派は、この計画は策略によってのみ達成できる、少なくとも、諸外国を怯えさせるような計画など持っていないというそぶりをすべきだ、と考えていた」と。

 次回に続く。

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