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2021年08月02日07:31

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中国共産党は「100年マラソン」で世界覇権を狙っている1

はじめに

 アメリカの中国研究の権威マイケル・ピルズベリーは、2015年(平成27年)に『China 2049 秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」』(日経BP社)を刊行した。原題は、”The Hundred-year Marathon”(100年マラソン)という。
 本書のキーワードは原題の通り、「100年マラソン」である。邦題には、このキーワードが入っていないが、共産中国は2049年までに世界覇権の確立を図る「100年マラソン」戦略を秘密裏に遂行していることを意味する題名になっている。
 本書によって、アメリカの対中政策は変わった。刊行後の2017年(平成29年)1月に発足したドナルド・トランプ政権は、それまでの中国との相互依存政策から脱し、中国との対決姿勢を明らかにした。本年1月から民主党バイデン政権に替わったが、アメリカの対中姿勢は以前のように融和的ではなくなっている。それは、本書が明らかにした中国共産党の「100年マラソン」戦略をアメリカの指導層の多くが理解し、これに対抗しないとアメリカは中国に負けるという危機感を共有するようになったことによるだろう。
 ここ数年の展開を踏まえて、本書を再読し、中国の「100年マラソン」戦略への対策を再検討したいと思う。18回ほどの連載を予定している。

●ピルズベリーの本によってアメリカの対中政策は大きく変わった

 本書の著書ピルズベリーは、リチャード・ニクソン政権からバラク・オバマ政権まで、長くアメリカの対中政策に関わった。トランプ前政権では中国問題についての重要な助言者とされ、政権末期にアメリカの国防政策に強い影響力を持つ国防政策委員長に就任した。現在は、保守系のシンクタンク、ハドソン研究所中国戦略センターの所長であり、米国防総省の顧問を務めている。また、外交問題評議会(CFR)、国際戦略研究所(IISS)のメンバーとされる。
 ピルズベリーは、もともと米中国交回復や米国の関与政策を推し進め、「パンダ・ハガー」と呼ばれる親中派の一人だった。中国を援助して中国が経済的に発展すれば、民主化すると信じていた。だが、1990年代の後半から、それが間違いであることに気づき始め、ようやく2013年に自らの間違いを決定的に認識するに至った。
 その後、自らの反省をもって刊行したのが、本書である。ピルズベリーは、本書で「アメリカの対中戦略は根本的に間違っていた。中国の歴史的野望をつい最近まで見抜けなかった」と告白している。中国共産党は、19世紀半ばから100年にわたり欧米諸国によって支配された屈辱に復讐するために、中華人民共和国建国以来、100年後の2049年には世界の覇権を米国から奪うという野心をもって、「100年マラソン」を着々と走ってきたとピルズベリーは主張する。自分自身が中国の巧みな戦略に騙されてきたと認めたうえで、ピルズベリーは中国の超長期的な戦略を明らかにして、米国と世界に向けて強く警鐘を鳴らしている。
 本書の解説に、元防衛大臣・森本敏氏は、次のように書いている。
 「ピルズベリー博士は実際、本書の中で『ニクソン政権以来、30年に渡って政府機関で働いていた中国の専門家として誰よりも中国の軍部や諜報機関に通じていると断言できる』と自負している。その本人が本書の冒頭で、米国は中国の国家戦略の根底にある意図を見抜く事ができず、騙され続けてきたと告白する。この告白は衝撃的である。我々はこれほど中国に精通し、中国要人と交流のあった同博士でさえ中国に欺かれ続け、それを知らずに歴代米国政権が対中政策をピルズベリー博士の助言や勧告に基づいて進めてきた事実を知って今更の如く愕然とする」。
 ピルズベリーが本書を刊行した後、アメリカの対中政策は大きく変わった。本書の刊行と同じ2015年、アメリカの経済学者ピーター・ナヴァロは、『米中もし戦わば 戦争の地政学』を刊行した。この著書は、世界的なベストセラーになった。ピルズベリーの本より遥かに多くの読者を得ている。原題は、“Crouching Tiger”という。「中国は身を低くして獲物に飛びかかる姿勢にある虎だ」という意味である。この著書でナヴァロは、ピルズベリーを中国問題の権威として高く評価し、要所要所にピルズベリーの言葉を引用している。経済学者であるナヴァロが米中関係を地政学的にとらえ、米中戦争が起こる可能性が高くなっていると警告するようになった要因には、ピルズベリーの本書の影響があるに違いない。
 2016年の大統領選挙に出馬したドナルド・トランプは、ナヴァロの本を読んで感銘を受けた。トランプが大統領に就任するや、共産中国に対して、強硬な姿勢を打ち出したのは、ナヴァロの影響が大きいだろう。トランプは2018年から米中経済戦争を繰り広げたが、そのトランプの対中政策のブレーンになったのが、ナヴァロである。ナヴァロは大統領選挙期間から政策顧問としてトランプ陣営に加わった。政権では、新設された国家通商会議(現・通商製造業政策局)の議長に就任し、通商問題のブレーンとして米中経済戦争を主導するなど、政権内で強い影響力を発揮した。
 トランプ政権は、米国は米中経済戦争を優勢に進めていた。だが、その対立の最中に、中国から武漢ウイルスの感染拡大が広がった。米国は世界最多の死亡者が出て、大恐慌以来の経済的な打撃を受けた。トランプ政権は中国を厳しく非難した。だが、中国共産党政府は、新型コロナウイルスが武漢で発生したことを認めていない。それどころか、中国は、コロナ危機に乗じて自国の利益を追求する利己的な行動を繰り広げている。
 アメリカでは昨年11月3日に大統領選挙が行われた際、大規模な不正行為があったことを示す多くの証拠が挙がった。だが、結果は覆らず、本年1月20日に民主党のジョー・バイデンが新大統領に就任した。もしトランプが勝利していれば、トランプ政権の対中政策が引き続き、強力に実施されることになっただろう。だが、バイデン政権に替わっても、基本的な対中姿勢は維持されている。米国では、国民の70%以上が中国に厳しく対処すべきだという意見になっているからである。それを無視した政策は出来ない。また、ここ数年の間に、民主党と共和党が一致して、中国に対して厳しい政策を行なうための法律を作ってきた。バイデン政権も、こうした法律に基づく外交政策を行なわねばならない。それゆえ、基本的な対中姿勢は維持されている。しかし、地球環境政策を重視するバイデン政権は、徐々にその点から中国に妥協・譲歩する政策に変化していく可能性が高い。また、バイデンと言う政治家は、軍事力の行使には極めて消極的な政治家ゆえ、中国が台湾・尖閣諸島等に侵攻した場合、断固とした対応が出来ず、中国の覇権拡大を許してしまう恐れがある。
 トランプ政権のポンペオ国務長官は、中国の脅威の対処という課題には、「自由世界が中国を変えなければ、共産中国が私たちを変えてしまう」と強調した。今や世界はそういう危機にある。米国の政権が民主党に替わっても、このことを理解して対中政策を行わないと大きな失敗をするだろう。
 このような認識を以って世界の現状を見る時、ピルズベリーが本を刊行して、中国共産党の「100年マラソン」戦略を明らかにし、アメリカの指導層の中国への理解に大きな変化を生み出した意義は、極めて大きい。だが、日本では、まだ本書の歴史的な意義が十分認識されていないのではないか。政治家が中国共産党の「100年マラソン」戦略について公言し、それへの対策を論じるのを私は寡聞にして知らない。直接言及すると、中国共産党を強く刺激するからだろうか。しかし、日本の指導層が語らなければ、主要メディアは取り上げず、国民の多くの知るところにならないだろう。

 次回に続く。

************* 著書のご案内 ****************

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