◆十如是
智�擇蓮◆慄＿攘弌戮鮑嚢發侶佚気塙佑┐拭�『法華経』については、その項目に書いたが、智�擇蓮�鳩摩羅什訳の『法華経』方便品 (ほうべんぼん)にある、「如是（にょぜ）」の文に注目した。「如是」とは「是（かく）の如（ごと）し」「そのようである」を意味する。諸法の実相すなわち現象世界の一切の事物の真実の姿には、十種の如是があるとし、これを十如是という。十如是とは、如是相、如是性、如是体、如是力、如是作、如是因、如是縁、如是果、如是報、如是本末究竟をいう。相（そう）は相状、性（しょう）は本性、体（たい）は本体、力（りき）は潜在力、作（さ）はその力の顕現、因は直接原因、縁は間接原因、果は結果、報は後世の報果、本末究竟等（ほんまつくきょうとう）は、初めの相を本とし、終わりの報を末として本来は一貫して等しいことをいう。
智�擇蓮⊇叔＼Г蓮�現象と本質とが互いに一体化して区別なく、仮に現れているものと真実とが一如になっていることを表わしているとした。彼の教学は、この思想に基づく。ところが、十如是は鳩摩羅什訳の『法華経』にのみ見られるもので、サンスクリット語の原典や他の訳には出てこないことが、後代の研究によって指摘されている。鳩摩羅什が原典にないことを意訳または付記したものと考えられる。それゆえ、智�擇龍騎悗療験�は、『法華経』の原文から離れた領域に広げたものである。
◆円融三諦
智�擇蓮�鳩摩羅什による『法華経』の漢訳に基づいて、十如是を説いた智�擇砲茲襪函⊇叔＼Г砲六按未蠅瞭匹瀛�がある。是相如、是性如等と読めば空の義、如是相、如是性等と読めば仮の義、相如是、性如是等と読めば中の義であるという。そして、智�擇蓮�空・仮・中という概念を用いて、空諦・仮諦（けたい）・中諦の三諦の円融を説いた。
空諦とは、諸法すなわち一切の存在者には実体がなく空であるという真理である。仮諦とは、諸法は縁起によって仮に現象しているという真理である。中諦とは、諸法は空･仮を超えた絶対のものであるという真理である。
これらの空・仮・中の三諦は、それぞれ独立した真理ではなく、働きに応じて区別はあるが、本体は一つで三者のそれぞれがそのうちに他の二諦を具え、かつ三者が相互に融合しているとして、これを円融三諦と呼ぶ。これに対し、三諦をそれぞれ独立した真理ととらえるときは、隔歴三諦(きゃくりゃくさんたい)という。円融三融には、一念三千と同じく部分が全体を含むという構造がある。さらに、部分が互いに残りの部分を含み合うという構造が加わっている。
だが、こうした智�擇了彖曚蓮◆慄＿攘弌戮隆遡�の解釈に基づいて独自の展開を見せたものであり、もとの『法華経』のサンスクリット本に戻れば、彼の解釈は成り立たないものである。渡辺照宏は、著書『日本の仏教』で、このことを指摘したうえで、ここに用いた空・仮・中の三諦の説もインド仏教の資料に対する誤解から来ているとして、次のように書いている。
「空・仮・中の三諦は、慧文が『中論』の一偈によって一心三観の理を無師独悟し、慧思を経て智�擇謀舛┐蕕譴燭箸いΑ�その『中論』の偈というのは、サンスクリット本から訳すと、『縁起のことをわれわれは空性と名付ける。それはよりどころがあって仮説することであり、中道そのものである』というので、インド仏教史的背景のある三つの同義語（ほそかわ註 空性・仮説・中道）を並べて説いたのであるが、これが中国僧侶の手にかかると、まったく無関係な理論の組み立てに応用されるのだから空怖ろしい」と。
渡辺は、結論として、「天台の教義なるものはまったく無智と誤解のうえに築かれたものと言えよう」と述べている。
◆一念三千
智�擇蓮�現象世界の真実の姿を示すために、一念三千を説いた。一念三千とは、一念すなわち一瞬一瞬の心の動きに、諸法の実相が具わっていることを意味する。いわば部分に全体が含まれているという見方である。
智�擇蓮◆慄琺纏澳僉戮法嶌，了粟蕕楼貲阿凌瓦忘澆蝓�若（も）し心無くば已（や）みなん。介爾（けに）も心あらば即ち三千を具す」と記している。ここで三千は、一切、すべてを意味する。
天台宗では、六道の六つの領域に声聞界・縁覚界・菩薩界・仏界を加えて、十界という。前者の六つは迷いの世界、後者の四つは悟りの世界である。これらの迷悟の十界が互いに具わり合って百界となり、その百界のそれぞれが十如是を具えて千となり、さらにその千が衆生・国土・五陰（ごおん）の三世間に渡って三千となるとし、この三千の数で諸法すなわち宇宙の一切の現象を表現するものである。五陰は、五蘊と同じである。
私見を述べると、智�擇蓮⇔琉茲粒鞠亜�範疇の概念、主体の概念を区別せずに、ただ数値化して掛け合わせて三千という数を算出している。近代西欧の哲学及び科学の概念体系を学んだ者にとっては、厳密さを欠くといわざるをえないものだが、一種の象徴的な数の思考と考えることもできよう。
次回に続く。
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