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2020年09月13日10:24

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仏教53〜修己治人の道、儒教と仏教

●修己治人の道

 儒教は、天の道を根本として、人の道を説く。儒教における人の道とは、人間が守り行うべき人間社会の倫理の原則、行動や実践の規範を意味する。これは、単に個人的な倫理道徳ではなく、為政者が身に着け、実行すべき政治道徳でこそある。それゆえ、儒教の教えは「修己治人の道」と呼ばれる。修己治人は、儒教を大成した朱熹がその特徴をよく表した言葉である。己を修めて徳を身につけ、その徳をもって国を治めることである。それゆえ、儒教は主に為政者すなわち帝王や士大夫(官僚)を対象とした学問である。

◆身に着けるべき徳目
 儒教は、道を踏み行なって徳を身に着けるべきことを説く。徳の中心に置かれるのは、「仁」である。仁は、孔子は、聖人君子が備えるべき徳として説いたものである。仁は、忠(まごころ)と恕(思いやり)の両面を持つ。
 仁を実現する第一段階は、親と子の間の愛である「孝」の実践である。これに次ぐのが、兄弟の間の愛である「悌」である。こうして身近な者への愛から出発して、その愛の及ぶ範囲を家族から社会へと順次拡大していく差別的・段階的な考え方を取るのが、儒教の道徳説である。

◆仁義・三徳・四徳・五常・五倫
 儒教は、「仁を」中心として様々な徳を挙げる。
 仁は、まごころと思いやりであるが、人間は感情に流されると、判断を誤る。仁の働きは、物事の道理にかなったものでなくてはならない。そこで仁を理性によって適切に働かせる徳が、「義」である。仁と義を合わせて、孟子は「仁義」という。
 仁に「智」「勇」を加えて、『中庸』は智・仁・勇の「三徳」という。智は智慧、仁は仁愛、勇は勇気である。
 仁・義に「礼」「智」を加えて、「四徳」という。礼は、儀礼・礼儀であり、社会の秩序を維持し、人間関係を円滑にするための規範・慣習である。智は、物事の是非・善悪を判断する能力である。
 四徳に「信」を加えて、「五常」という。信は、人や天地神明に対して、うそ偽りのない心のあり方、態度である。信と同義の言葉に「誠」がある。誠は、単に人間のあり方、態度ではなく、天の道にして、また正気(せいき)すなわち天地にみなぎる至公・至大・至正の気を意味する。そして、そこからその道にかない、正気を対した人間の心のあり方、態度をいう。
 儒教では、基本的な対人関係を五つに分け、それぞれの関係におけるあり方を定めたものを、「五倫」という。君臣の義、父子の親、夫婦の別、長幼の序、朋友の信である。五常の徳性を拡充することにより、五倫の道を全うすべきことを儒教は説く。
 五倫のうち、君臣の義は忠、父子の親は孝の徳として現れる。忠は、まごころであり、君臣間のまごころによるつながりをいう。孝は、親子双方の愛情をいうが、特に子の親に対する愛をいう。
 儒教は忠孝一致の教えだが、シナ文明では孝を重んじ、忠は孝の中に包含される。これに対し、日本文明では忠を重んじ、孝は忠の中に包含される。シナ文明では、異なる民族間で王朝が幾度も交替した。人民と皇帝は血縁で結びついていないから、親子の間の孝は君臣の間の忠に連続しない。だから、皇帝への忠より自分の家族・氏族における孝が優先される。これに対し、古代から一系の皇室を中心とする日本文明では、天皇と国民は一大家族国家をなし、親や祖先への孝は天皇への忠につながる。家族・氏族における孝と、民族の中心である天皇への忠が連続する。これを忠孝一本という。

◆目標とする人格
 儒教では、徳を完全に体得した理想的な人間を、「聖人」と呼ぶ。「聖」は、仁の理念を実現した理想的な状態である。
 聖人は、天と一体であり、道を体得した者である。聖人は、帝王として天下に君臨すべきものとされる。ここに「聖王」すなわち有徳者王という為政者の理想が示される。その聖人を輔翼(ほよく)すなわち補佐すべき者が、「君子(くんし)」である。君子は、聖人のように完全ではないが、よく徳を身につけている人間である。
 聖人君子は、徳を以って人民を治める治者である。彼らの反対は、「小人(しょうじん)」である。小人は被治者であり、自分で修養する能力を持たず、治者の教化によって初めて徳を身に着けることができるとする。

●儒教と仏教
 儒教は、家族的・氏族的な宗教であり、また政治的な宗教である。現世志向が強く、主に集団救済を目的とする。そのため、個人の救済や来世の救済を求める人間の欲求には、よく応えられない。逆に、仏教は個人の救済や来世の救済を主たる目的としており、儒教では満たされない欲求に応えるものとして、シナ社会に浸透し得る可能性を持っていた。
後に述べ道教と競合する部分があるが、道教でも満たされないものを仏教は持っていた。それが仏教の有する世界宗教としての特質である。

 次回に続く。

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