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2020年01月15日09:26

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インド42〜マウリア朝、部派仏教

●マウリヤ朝と仏教の最盛期

 仏教教団が発展を続けていた時代に、インドは外部からの侵入を受けた。紀元前326年に、インド北西部はマケドニアの王アレクサンドロス(アレクサンダー大王)に支配された。アレクサンドロス大王はインダス川流域まで到達した。これに刺激されて、インド北部の都市国家に統一への動きが生じ、前317年頃、チャンドラグプタがマウリヤ朝を創始した。チャンドラグプタは、インドのほぼ全域及びアフガニスタンとバルチスターンにわたる大帝国を建設した。この時はじめてインド全体が統一された。首都はパータリプトラに置かれた。統一帝国の形成・拡大は、宰相カウティリヤの画策に負うところが大きかったとされる。
 紀元前3世紀半ば、チャンドラグプタの孫アショーカ王の時代に、マウリヤ朝の発展は絶頂に達した。アショーカは、仏教を篤く信仰し、仏教の教えに基づく政治を志し、教典の結集等の事業を行った。同王の治世の時から、仏教は急激にインド中に広がって、他の宗教に対して圧倒的に優勢になった。また、諸外国にも伝わった。この頃が、インドにおける仏教の最盛期となった。現在でもこの時期に造られた石柱碑が各地に残されている。
 アショーカは熱心な仏教信者だったが、他の宗教を排斥しなかった。ヴェーダの宗教、ジャイナ教等の宗教も仏教同様に保護し、すべての宗派を崇敬した。これは、アショーカ個人の寛容性だけでなく、インドにおける宗教の寛容性をよく表す事実である。
 紀元前232年にアショーカが亡くなると、マウリヤ朝は急速に衰えた。その後、インドは小国が興亡する分裂期が、紀元後1世紀のクシャーナ朝の成立まで続いた。この間、強力な王の保護を失った仏教は、困難な時期にあった。

●部派仏教

 根本分裂で一度、分裂を起こした仏教教団は、次々に分裂を繰り返した。これを枝末分裂という。その結果、20の部派に分かれた。
 部派仏教の時代には、それまでに成立していた経蔵・律蔵に加えて、論蔵(アビダルマ・ピタカ)が作られた。これは釈迦の教えについて、各部派が研究し、解釈したものをまとめた文献である。分類や定義づけを目的とするもので、学者たちによる詳細な教義論である。論蔵は、紀元前1世紀までには出来上がった。これによって、経蔵・律蔵・論蔵の三蔵(トリ・ピタカ)が成立した。
 各部派は独自の所論(アビダルマ)を持ち、教義に関する論争をした。出家者による議論は、在家者には理解しがたい高度で、また煩瑣なものだった。教義論争を続ける部派仏教は、一層ドグマ的になり、在家者の心から離れていった。
 部派仏教は、基本的に上座部と大衆部に分かれており、上座部から11派が派生し、大衆部は8派に分かれた。これらのうち重要なのは、上座部から分派した説一切有部と、さらにそこから分派した経量部である。
 説一切有部は、当時最大の学派だった。三世実有・法体恒有を基本的な立場とする。三世実有とは、森羅万象を形成するものとして、約70の構成要素を想定し、これを法(ダルマ)と呼び、法は過去・現在・未来の三世に常に実在するという説である。未来に存在する様々な可能性を持つ法が現在に引き出され、現在における瞬間に認識され、過去へ去っていくと説く。法には、一時的に現れる作用と、永遠に実在する本体があるとする。これを、法体恒有という。一種の存在論であり、時間論である。また、説一切有部は、心の理論としては、心心所相応説を説く。これは、約70の法のうち46を「心所」と呼ばれる精神的要素とし、その要素が「心」と呼ばれる基体と結合して、心理現象が現れると説くものである。説一切有部の教義は、紀元後100〜150年頃に編集された阿毘達磨大毘婆沙論で確立された。
 説一切有部は、法を恒常的に実在するものとする点で、諸行無常の考え方とは異なり、釈迦の本来の教えから逸脱する。これに対し、説一切有部から分派した経量部は、三世実有・法体恒有の説を批判し、現在有体・過未無体の立場をとる。これは、法は非有から現れ、一瞬の間、発現し、次の瞬間には消滅するという説である。だが、経量部の立場からは、法が発現する潜在的可能性や発現と消滅の必然性は、よく説明することができない。また、経量部は、心心所相応説を否定し、心を基体と精神的要素に区別せずに、統一的にとらえるべきだとした。これも説一切有部の説を完全に斥けるほどの説得力を持たない。そのため、議論は収束せず平行線となった。
 部派仏教の時代に、出家者たちは、釈迦が戒めた形而上学的な議論に入り込み、そこから抜け出せなくなっていったといえよう。

 次回に続く。

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