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2018年05月12日08:40

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改憲8〜警察、軍隊、自衛隊

(12)警察と軍隊の違い

 警察力は、主に警察が保有する実力であり、防衛力・侵攻力は軍隊が保有する実力である。
警察は軍隊とともに、多くの国家が保有する組織である。警察は軍隊とは別に、武器を保有する実力組織である。広辞苑は、警察を「社会公共の安全・秩序に対する障害を除去するため、国家権力をもって国民に命令し、強制する作用。またその行政機関。行政警察」と定義している。警察は、こうした目的を持つ組織として、法を執行するため、必要な実力を有する。その実力が、警察力である。
 わが国の警察法は、警察の任務として「国民の生命・身体・財産の保護、犯罪の予防・鎮圧・捜査、被疑者の逮捕、公安の維持」を定めている。警察力は、これらの任務を遂行するために必要な実力である。
 わが国の警察は、警棒・拳銃のほか催涙弾、放水砲、装甲車、短機関銃等を保有する。これらの装備では、外国から侵攻する軍隊とは戦えない。国内であっても、重機関銃やバズーカ砲、ロケット弾等を使用する大規模な武装集団が内乱を起こしたならば、警察が鎮圧するのは困難である。多くの国の場合、警察が鎮圧できない程度の内乱・騒擾は軍隊が出動し、治安維持を行う。わが国においては、警察力では治安を維持することができないと認められる場合、内閣総理大臣の命令または都道府県知事の要請によって、自衛隊が治安出動を行う。この場合、自衛隊が治安出動で行使する筆力は、警察力の高度なものである。この点を加えて言い直すならば、一国が保有する警察力は、低度のものは警察が保有し、高度なものは軍隊が保有する。軍隊は、高度な警察力とともに、防衛力・侵攻力を持つ。
 警察も軍隊も、その目的の中に国民の生命・財産を守ることを持つ機構だが、この二つには大きな違いがある。警察は、国内における治安維持・犯罪防止等を主たる任務とする。軍隊は、対外的に国の主権と独立を守るために、外国の軍隊への対応を主たる任務とする。そのため、警察と軍隊では、許される行動原理が違う。
 警察は、その権限を国内法によって付与され、国内法で認められたことしか行使できない。警察権は国民に対して行使されるため、国家権力の乱用を防ぐためにこうした規制がかけられている。また、警察力の行使は、国内に厳格に限定されている。警察官は文官であり、武官(軍人)ではないので、戦時国際法における軍人として扱われることはない。
 これに比し、軍隊は、主に他国の軍隊と戦闘することを目的としており、軍隊に与えられる権限は、国際法による。また、軍事力の行使が可能な領域は、国内に限定されない。軍隊の権限は、国際法の主権絶対の原則や主権平等の原則に基づく。軍隊は、戦時国際法で禁止されていること以外は権限を行使できる。基本的には原則無制限の権限である。戦時国際法による禁止事項とは、毒ガス等の国際的に禁止されている兵器の使用、非軍事施設への攻撃、捕虜の虐待等である。それ以外については、軍隊は自国を守るため、国際法に従って自由に行動し、権限を行使することができる。軍隊にこのような自由が認められているのは、外国の侵略はいつどこでどのように行われるか、全く予測できないからである、警察のようにあらかじめ許された行動規定を設けるのでなく、いかなる事態にも対処できるように、こうした自由が認められているのである。
 世界的に軍隊を持たない国は、ローマ・カトリック教会の宗教国家であるバチカン市国、人口500万以下の小国コスタリカなどごくわずかである。コスタリカは、1949年の憲法で常備軍を廃止したが、その憲法は非常時徴兵を規定している。
 大多数の国では、軍隊が保安機能を持ち、その機能の一部を担っているのが警察という関係になっている。ただし、人口や政府機関の人員が少ない国では、警察と軍隊が明確に分離していないことが多い。例えば、トンガでは、軍人の過半数が普段は警察官としての業務を行っている。また、警察が警察軍と呼ばれる準軍隊的な組織を保有している国もある。わが国の自衛隊は警察予備軍を前身の一つとしており、警察軍としての性格を持っている。

(13)軍隊と自衛隊

 自衛隊は、軍隊であるか、軍隊でないかについて説が分かれている。政府の見解は、平成27年(2015年)4月3日に閣議決定された答弁書に示されている。それによると、自衛隊は、「通常の観念で考えられる軍隊とは異なる」が「自衛の措置としての『武力の行使』を行う組織」であり、「国際法上、一般的には、軍隊として取り扱われるものと考えられる」という。答弁書の主要部分は、次の通り。
 「国際法上、軍隊とは、一般的に、武力紛争に際して武力を行使することを任務とする国家の組織を指すものと考えられている。自衛隊は、憲法上自衛のための必要最小限度を超える実力を保持し得ない等の制約を課せられており、通常の観念で考えられる軍隊とは異なるものであると考えているが、我が国を防衛することを主たる任務とし憲法第九条の下で許容される『武力の行使』の要件に該当する場合の自衛の措置としての『武力の行使』を行う組織であることから、国際法上、一般的には、軍隊として取り扱われるものと考えられる。」
 自衛隊が国際法上は軍隊として取り扱われるということについては、戦時国際法関連の条約は、「戦争に参加した軍隊」に適応されるのではなく、「紛争に参加した国の組織的な戦闘員全て」に適応されるとしている。それゆえ、わが国が自衛隊を軍隊と規定していなくとも、軍隊と同様の組織として取り扱われると理解される。
 それでは、自衛隊が武力を行使した場合、その行為は国際法上、戦争と認められるか。この点に関し、平成14年(2002年)2月5日に閣議決定された「戦争」「紛争」「武力の行使」等の違いに関する政府の答弁書は、次のような見解を示している。
 「憲法第九条第一項は、独立国家に固有の自衛権までも否定する趣旨のものではなく、自衛のための必要最小限度の武力の行使は認められているところであると解されるから、自衛隊が自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第八十八条に基づいて必要な武力を行使したとしても、憲法第九条で禁止されている『国権の発動たる戦争』には当たらないと考える。」
 自衛隊法第88条は、防衛出動時の武力行使を定めるものである。
 さて、政府見解によると、憲法9条1項はすべての戦争を放棄したものであるから、自衛戦争も放棄したという意味になる。だが、1項は独立国家に固有の自衛権までも否定するものではないと解するので、自衛権を発動して自衛隊が武力を行使しても、それは戦争ではないことになる。自衛戦争ではなく、自衛のための武力行使であり、軍隊ではない実力組織がそのために武力行使を行うことは、戦争ではないという論理である。ここには、自衛隊は警察でも軍隊でもなく、その中間に位置する実力組織だという考えがある。また9条2項は戦力の不保持を定めており、自衛隊の持つ武力は戦力ではなく、「必要最小限度の実力」であるという見解に立っている。これに対して、政府の見解に矛盾を感じ、自衛隊の持つ能力は戦力であるという見方がある。

 次回に続く。

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