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2016年08月29日16:38

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俳句、短歌、詩の幻想に向かって(23) 山田航編著「桜前線開架宣言」から田村元

 山田航編著「桜前線開架宣言」左右社2015 から(2)田村元
 田村元 1977年群馬県新里村(現・桐生市)
 

 1枚目 新宿の赤い月・・・不吉な前兆?
 2枚目 常磐線沿いの街 土浦のレンコン畑
 3枚目 「坊っちゃん」・・・明治のアングリー・ヤングメン

 真夜中の環状線は走れども走れども永久(とは)にこの街を出ず
 ☆海風:環状線になど乗るから悪夢を見る。この街でいいんです。そういえば、眠ったような地方都市を出てゆく、などと送別の辞を書いたのがいた。今どうしているのか。

 春怒涛とどろく海へ迫り出せり半島のごときわれの<過剰>が
 ☆海風:イザナギ・イザナミのように国造りとはいかなくても、せめて家をつくれないものか? ただの過剰は流れておしまい。

 サラリーマン向きではないと思ひをりみーんな思ひをり赤い月見て
 ☆海風:何の前兆か赤い月が上がる。世が世ならと一瞬思う。いや、気の迷いだと言われなくても分かっている。

 ぬばたまの常磐線の酔客の支へて来たる日本、はどこだ
 ☆海風:風が吹けば雨が降れば止まる常磐線。遅く帰って早く出るサラリーマンが経済成長を支えていた。常磐線は夜が似合うか。「ぬばたま」が万葉時代の常陸を思い出させる。

 千代田線へと乗り入れて行くときの常磐線は俯いてをり
 ☆海風:そんなに卑下しなくても茨城県。空をギザギザにする山はないし、宅地も畑も広いし、納豆にせんべい、レンコンにピーナッツなどたくさんあります。

 添付ファイル添付し忘れもういちど春の闇へと「送信」を押す
 ☆海風:メール送信・受信の格闘。昔を思い出しました。暗号を打ち込んで解凍したり。メールにソフトがあるぞ、と言って感激していた私の後任。

 人生は意外に長いもんだねの「ね」が焼酎に濡れてしまつて
 ☆海風:念押しの「ね」に力が入ってない。明日どうなるか分からんのだし。

 旧姓を木の芽の中に置いて来てきみは小さくうなづいてゐた
 ☆海風:おめでとうございます。まるでシリトー「土曜の夜と日曜の朝」の映画のラストシーン。斜に構えていた青年の空虚を埋める小舟が来てくれました。そう言えば、作者の田村元もシリトーのようなアングリー・ヤングメンに違いない。もっとも、明治の「坊ちゃん」が元祖かもしれない。


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