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2016年06月22日09:39

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北朝鮮による朝鮮半島有事に備えよう1

 北朝鮮は5月22日、新型の中距離弾道ミサイル「ムスダン」とみられるミサイルを発射した。1発目は空中爆発して失敗したが、2発目は中距離弾道ミサイルとしての一定の機能を示した。ムスダンの発射はこれで5回目となる。過去4回に比べ、技術レベルがまた向上したとみられる。   振り返ると、北朝鮮は、本年(平成28年)1月6日に核実験、2月7日には長距離弾道ミサイル発射実験を強行した。いずれも安保理決議違反だが、金正恩第1書記は意に介さない。3月2日国連安全保障理事会がこれまで以上に厳しい制裁決議案を全会一致で採択したが、北朝鮮はこれに反発し、挑戦的な姿勢を変えていない。
 北朝鮮は、5月上旬36年ぶりに朝鮮労働党大会を行った。金正恩は「責任ある核保有国」と宣言した。新設された労働党委員長に就任し、本格的な金正恩体制の時代に入った。今後、より一層金正恩体制の強化を進め、わが国や韓国、米国への攻撃力を高めていくだろう。わが国は、安保関連法のもと、朝鮮半島有事への備えを急がねばならない。

●北朝鮮は自称「水爆実験」を強行

 ここ数か月を振り返ると、金正恩政権は1月6日に「実験用の水素爆弾実験」と称して地下核実験を強行した。核実験は4度目となる。当初はその規模などから水素爆弾ではなく、実験は失敗だったという評価が多かった。ところが分析が進むにつれ、韓国では、水素爆弾の前段階のブースト型爆弾実験だった可能性が高くなり、爆発の規模をコントロールしており技術的には成功だったという見方が主流になっている。わが国の政府も、今回の核実験による地震の規模や地震波の形状、大気中の放射性物質の状況などを分析し、ブースト型原爆の技術が使われたとの見方を強めている。ブースト型原爆の技術は水爆開発に必要な技術でもあることから、北朝鮮の核開発は一段階進んだと考えられる。ブースト型原爆は核弾頭の小型化にもつながる。ミサイル技術の向上と合わせて、威力の高い長距離弾道ミサイルの開発が進むと、東アジアだけでなく米国にとっても大きな脅威となる。
 続いて、北朝鮮は、2月7日、北西部の平安北道・東倉里(トンチャンリ)にある発射場から、長距離弾道ミサイルを発射した。長距離弾道ミサイルの発射は平成24年(2012)12月以来だった。
 前回平成24年(2012)末に発射したミサイルは「テポドン2号改良型」とされる。最大射程1万キロだったとみられる。今回、発射した長距離弾道ミサイルの詳細は明らかではないが、物体を宇宙空間に運ぶことには成功した。
 東倉里の発射場では、発射台の高さが50メートルから67メートルに増築され、米東海岸に達する射程1万5千キロ以上の大陸間弾道ミサイル(ICBM)も発射できる状態になっているとみられる。
 北朝鮮はこれまで弾道ミサイルの発射を「人工衛星の打ち上げ」と主張してきているが、弾道ミサイル発射と衛星打ち上げは同じ原理である。国連安全保障理事会決議は、人工衛星を含め「弾道ミサイル技術を使った全ての発射」を北朝鮮に禁じている。
 核実験と弾道ミサイル発射を受けて、国際社会は対北制裁を強化した。北朝鮮はこれに反発し、さらなるミサイル発射や核実験に踏み切る可能性がある。

●韓国の対応

 韓国は、北朝鮮による核実験と長距離弾道ミサイルに対し、独自制裁として南北経済協力事業の開城工業団地の稼働中断等を断行した。朴槿恵大統領は、北朝鮮の「体制崩壊」に言及し、強力な制裁で「必ず変化させる」と断言した。
 北朝鮮は、工団に滞在する韓国人の追放、現地の韓国側資産の全面凍結、工団一帯の「軍事統制区域」の指定などを宣言して応酬した。
 朴大統領は2月16日、国会で演説し、「従来のやり方や善意では北朝鮮の核開発の意志を変えられない。挑発に屈服し何でも与える支援はこれ以上してはならない」と明言した。「韓国の努力と支援に北朝鮮は核とミサイルで応じた」と非難し、「韓国が事実上、核・ミサイル開発を支援する状況を続けることはできない」と述べ、金大中政権以来、韓国がとり続けてきた北朝鮮への経済協力などが失敗だったことを認めた。
 朴大統領によると、1990年代半ば以降、政府レベルの対北支援だけで22億ドル(約2530億円)を超え、民間レベルの支援を合わせれば30億ドルを超える。北朝鮮がそのほとんどを飢えと極貧に苦しむ人民のためではなく、核・ミサイル開発に充てたと推測される。

●米国の対応

 北朝鮮の暴挙に対し、米国は、すぐさま原子力潜水艦を韓国に入港させたり、B52戦略爆撃機を韓国の上空に飛行させるなどして、北朝鮮に圧力をかけた。
 これに対し、北朝鮮は金正恩(当時第1書記)自らが「実戦配備した核弾頭を発射できるよう常に準備すべきだ」と指示した。青瓦台(韓国大統領府)を第1次攻撃対象、次にアジア太平洋地域の米軍基地と米本土を第2次攻撃対象として挙げ、先制攻撃を辞さないことを言及した。
韓国は、かつて自主防衛を主張する盧武鉉政権下で、米軍にあった戦時作戦統制権の韓国移管を決めた。しかしその後、北朝鮮の核ミサイル戦略が進展すると、朴政権は平成26年(2014)10月の国防相会談で統制権移管を無期延期とした。この判断は正解だった。
 米国は、このたびの北朝鮮の強硬な姿勢を受けて、韓国に最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備を認めるように迫った。朴槿恵大統領は、27年(2015)9月に北京で開かれた抗日戦争勝利70周年記念式典に参加し、習近平主席との蜜月時代を誇示した。だが、北朝鮮の脅威を前にして態度を変え、THAADの配備を認め、米日韓協力に踏み切った。
 一方、中国は、THAADは北朝鮮の核・ミサイル問題に対処するためだけではなく、中国にも向けられているとして反発している。THAADのレーダー・システムは、中国の領土も探査できるからである。

 次回に続く。
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