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2016年03月27日07:04

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イスラーム33〜チュニジア国立博物館襲撃事件

●チュニジア国立博物館襲撃事件

 2015年(平成27年)3月19日北アフリカの地中海岸にあるチュニジアの首都チュニスで、武装したイスラーム教過激派集団が国立バルドー博物館を訪れた外国人観光客を襲撃し、観光客21人が死亡した。うち日本人は3人が犠牲になり、他に3人が負傷した。
 ISILは事件当日、インターネット上で音声による犯行声明を公表した。声明は、「十字軍と背教者どもを多数殺傷した」とテロの成果を誇示し、新たなテロを予告した。
 テロを実行したのは、ISILにつながる「アンサール・シャリーア」とみられる。チュニジアではジャスミン革命後、独裁政権時代には厳しく監視されていた過激なイスラーム教勢力が活動の自由を得て、武装組織を結成し、国内外の組織と連携を深めてきた。その中心的存在が、「アンサール・シャリーア」である。厳格なイスラーム法解釈による原理主義的な統治を目指す過激組織で、組織名は「イスラーム法の支援者」を意味する。チュニジアやリビア、イエメン等に同名を称する組織があり、ISILやアルカーイダに忠誠を誓うグループもあるという。
 イスラーム教過激派は、西欧発の現代国家を非イスラーム教的なものであり、破壊対象とする。イスラーム教過激派の論理では、非イスラーム教的な政府を支える外国人観光客を殺害することは、ジハード(聖戦)として正当化される。国立博物館を訪れた多数の国々からの外国人観光客を無差別に射殺すれば、世界各国に事件が報道され、過激組織が注目を浴びる。それによって、過激派内での評価や地位を高めたり、戦士や資金を多く集められたりするという効果をもたらす。こうした狙いをもって、襲撃事件は行われたと考えられる。
 チュニジアからは約3000人がシリアに渡り、そのうちの多数がISILに参加している。500人ほどがすでに帰国したとされる。東側に隣接するリビアが内戦状態にあることなどから、戦士や武器の流入を防ぐことは難しい。
 外国人観光客襲撃事件は、欧米諸国に衝撃を与えた。米国にとって、「アラブの春」による民主化が唯一成功しているチュニジアが不安定化することは、中東・アフリカ政策に大きな痛手となる。
 欧州ではこの年、1月のフランス風刺紙襲撃事件後、同月に再びフランスで、また2月にデンマークで連続テロが起きており、欧州連合(EU)域内の対策強化に努めていた。チュニスでの襲撃事件では、域外で多くのEU出身者が犠牲となった。EUは、中東などの戦闘に参加した欧州出身の若者が帰国後にテロを起こすことへの警戒を高め、これへの対処のため、中東や北アフリカ諸国との協力を強化する方針を決めた。だが、地中海の対岸にある北アフリカが不安定化すると、その波は地中海からアルプスを越えて、ヨーロッパを深く浸食するおそれがある。
 特にリビアでは、2014年(平成26年)以降、イスラーム教勢力を中心とする軍閥とこれに対抗する勢力との戦闘が激化し、多数の難民が発生し、欧州等へ流入している。地中海を粗末な船で渡ろうとして、沈没・水死する者も多数出ている。内戦状態で政府が機能しておらず、多くの武装組織の武器調達ルートとなっている。また、リビアでもISIL系過激組織が勢力を拡大している。ISILは、世界中のジハード戦士たちにリビアに集まるように呼びかけている。リビアには石油資源があり、ここを活動の拠点とすることを狙っている。ISILは、既にリビアの首都トリポリからスィルトを含む広範なエリアを「タラーブルス州」と勝手に宣言している。今後、混乱が続けば、リビアが欧米に対するテロの拠点となり、地中海を渡る難民に過激派が紛れ込んで欧州に侵入するおそれもある。
 また、ISILは、リビアで勢力を伸ばす一方、リビアに影響力を振るい得るエジプトをも標的にしている。同時にシナイ半島でのテロを活発化させており、東西の両側からエジプトのシーシー政権を揺さぶっているとみられる。

 次回に続く。

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