mixiユーザー(id:525191)

2016年03月06日08:43

401 view

イスラーム25〜アメリカ=イスラエル連合

●イスラーム文明と対立するアメリカ=イスラエル連合

 イスラーム文明の中心地域である中東には、イスラエルというイスラーム教徒にとっては異教徒の強力な国家が存在し続けている。イスラエルは、アメリカにとって、中東で最も重要な国となっている。ユダヤ教とキリスト教の宗教的なつながりとともに、ロスチャイルド家・ロックフェラー家等の巨大金融資本の連携が背景にある。
 カーター大統領の時期には、アメリカはイスラエルとエジプトの和平に努力した。しかし、イスラエルには、和平を目指す勢力と、徹底的な対決を求める勢力がある。イスラエルのシオニストは、アメリカにおいて、同調者・支持者を増やし、アメリカの民衆をイスラエル支持・シオニスト擁護に誘導している。1980年代以降、アメリカの指導層は、イスラエル政府の外交政策を支持する親イスラエル派やシオニストが主流を占めている。キリスト教保守派の多くは、イスラエルを守るべき国とし、キリスト教とユダヤ教の結びつきが強化されている。とりわけ1989年(平成元年)米ソの冷戦が終結したことで、シオニストの対米活動が活発になったとみられる。91年、ブッシュ父政権の時代に、ソ連が崩壊し、アメリカが唯一の超大国になった。この国際構造の変化に対応して、シオニスト=ロスチャイルド家は、地球覇権国家アメリカをイスラエル寄りにし、アメリカの軍事力で自国と利益を守る仕組みを構築しようと図ったのだろう。
 ユダヤ人は世界に約1330万人(2009年現在)いるとされるが、そのうち570万人のユダヤ人はアメリカにいる。その数はイスラエルにおける550万人を上回っている。アメリカには積極的な政治活動を行うユダヤ系団体があり、政府・議会に徹底したロビー活動を行っている。主な政治家はほとんどが親イスラエル的である。親イスラエルでないと、選挙で当選できないと言っても過言ではない。これに比べ、アメリカのイスラーム教徒は、ユダヤ人の3分の1以下の数であり、またロビー活動を活発に展開するほど、組織化されていない。資金力でも、米国にはユダヤ人資産家が多くいるのに対し、イスラーム教徒は大きく劣っている。
 冷戦終結後、アメリカが世界で唯一の超大国となったとき、アメリカの世界的な覇権を確立するために、その圧倒的な軍事力を積極的に使用すべきだという戦略理論が登場した。それが、ネオコンである。ネオコンはネオ・コンサーバティズム(新保守主義)の略称である。
 ネオコンには、ユダヤ人の政治家・理論家が多く存在する。ネオコンは、自由とデモクラシーを人類普遍の価値であるとし、その啓蒙と拡大に努める。近代西洋的な価値観を、西洋文明以外の文明に、実力を用いてでも押し付けようとする。その点では、戦闘的な自由民主主義とも言えるが、そこにユダヤ=キリスト教の世界観が結びつき、イスラエルを擁護するところに、顕著な特徴がある。
 ネオコンは、ブッシュ子政権中枢に多く参入した。9・11は、アメリカ国民に、テロの恐怖を引き起こし、報復への怒りを沸き立たせた。そして、ネオコンの理論をアメリカが取るべき方針だと国民に思わせたのである。
 アフガニスタン戦争及びイラク戦争の開始後、9・11より前に、ネオコンのグループによって戦争が計画されていたことが明らかになった。その計画を実行するために起こされた事件が、9・11の同時多発テロ事件と考えられるのである。
 当時ユダヤ人のネオコンは、イスラエルの極右政党リクードの党首アリエル・シャロンの政策を支持し、シャロンと密接な関係を持っていた。シャロンは戦闘的なシオニストであり、パレスチナ難民の殺戮を容認し、「ベイルートの虐殺者」と呼ばれる人物である。シャロンは、2001年(平成13年)3月にイスラエルの首相となった。ここにアメリカ・ブッシュ子政権のネオコン・シオニストとイスラエルの強硬派政府との連携が出来上がった。ネオコン・シオニストは、アメリカの外交政策がシャロン政権を援護するように働きかけ、超大国アメリカの軍事力で、イスラエルの安全保障を強化しようとした。アメリカを親イスラエル、シオニストの国家に変貌させようと図ったのである。ブッシュ子政権のネオコン・シオニストは、イスラエルを支持し、アラブ諸国を軍事力で押さえ込み、石油・資源を掌中にし、自由とデモクラシーを移植する戦略を推進した。
 今日、イスラエルが核兵器を保有していることは半公然の事実である。イスラエルは、約200発の核兵器を持つとみられており、中東諸国の中では、圧倒的な軍事力を誇っている。アメリカは、イスラエルの核保有を追認しており、イスラエルに対しては、制裁を行なおうとはしない。その一方、イランやイラクの核開発は、認めない。明らかにダブル・スタンダードを用いている。イスラエルが自由とデモクラシーの国であり、アメリカと価値観を共有しているというのが、その理由だろうが、核の問題は別である。アラブ諸国の核開発は認めないが、イスラエルの保有は擁護するというのでは、イスラーム教徒が受け入れないのは、当然である。こうしたアメリカの姿勢が、中東を始め、世界各地でイスラエルへの批判勢力の反発を買っている。
 2008年の大統領選に勝利したオバマ大統領は、イスラエル支持を表明し、ネオコンが多く参加したブッシュ子政権の中東政策を概ね継承した。政権が共和党から民主党へ、ブッシュ子からオバマへと変わっても、根底にある親イスラエルの権力構造は変わっていない。
 イスラーム文明にとっては、アメリカ=イスラエル連合は大きな脅威であり、その連合によるユダヤ=キリスト教及びグローバル資本主義からイスラーム教的な価値観を守ることが、大きな課題となっている。

●イスラーム教徒によるテロリズムの脅威

 冷戦時代には、米ソが、アジア、アフリカ、ラテン・アメリカの国々を、自陣営に引き入れ、その国の支配体制を支援するなどして、勢力の維持を図っていた。しかし、冷戦終結後、二大超大国の対立構造によって保たれていた秩序が消滅した。その結果、それまで自由主義と共産主義というイデオロギーの対立のもとに抑えられていた民族問題や宗教問題、天然資源の分配問題等をめぐる紛争が各地で表面化するようになった。湾岸戦争は、ポスト冷戦時代の典型的な地域紛争の一つである。
 さらに、21世紀にはいると、地域紛争の増加に加えて、国際的なテロリズムの脅威が世界中に拡散した。宗教的・民族的・思想的な理由によるテロが、ヨーロッパ、アジア、ロシア等の各地で破壊や殺害を引き起こしている。1990年代以降、先進国の主導で国際経済の自由化が進められたが、これは発展途上国の一部から途上国をより困難な状況に陥れる政策であるとみられた。とくにイスラーム圏では、こうした先進国主導の国際経済に組み込まれることに強い反発が起こり、純粋にイスラーム的な国家や社会の実現を目指すイスラーム復興運動が民衆の支持を得るようになった。この運動は、欧米でイスラーム教原理主義と呼ぶものより、もっと広く深いものである。
 イスラーム教徒が多数を占める国は発展途上国が多く、人口増加率が高い。国際的な格差の拡大と人口増加によって、貧困層の増大が大きな問題となっている。貧困は乳幼児の死亡率の高さ、識字率の低さ、不衛生、環境破壊等をもたらす。イスラーム復興運動の中で一部の過激な勢力は、暴力によって貧困に伴う問題を解決しようと考えるようになった。特に2001年のアメリカ同時多発テロ事件をきっかけに、米国とイスラーム教過激派の対立が激化した。こうした事情が国際テロリズムの要因の一つとなっている。
 イスラーム復興運動は、世界的な広がりを持つ宗教によるものゆえ、ナショナリズムやエスニシズムよりも広い地域にわたる。近代西洋的な主権国家を超えた広域的なイスラーム教社会の連帯に基づいており、イスラーム文明による西洋文明や東方正教文明への対抗という性格を持っている。
 現代世界は、グローバリズムが進展する一方、文明、地域機構、ネイション、エスニック・グループ等が重層的に絡み合いながら、闘争と対話を繰り広げている。その中で、宗教を中核に持つ文明間の対立・抗争、または協調・融和は、現代世界の大きな変動の要因となっている。とりわけイスラーム文明は世界情勢と人類の運命に大きな影響を与える存在であり続けている。
 以上で、イスラーム文明の現代について、1945年から2010年代の初めまでの期間の記述を終える。2010年代の初めで区切るのは、2011年(平成23年)に「アラブの春」と呼ばれる出来事が起こり、以後、イスラーム文明に大きな波紋をもたらしているからである。

 次回に続く。

4 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する