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2014年08月19日09:22

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現代世界史22〜アメリカは変わりうるか

●オバマ大統領は「Change」を掲げた

 2008年(平成21年)11月、リーマン・ショックの激震の続くなか、米国大統領選挙が行われ、民主党のバラク・オバマが大統領になった。米国で黒人初の大統領だった。15世紀以来白人種の優勢が続く歴史の中で、有色人種からアメリカ合衆国の大統領が出たことは、文明史的にも画期的なことである。
 オバマは「Change(変革)」を訴えて、選挙戦を制した。世界大恐慌以来の経済危機への対処のため、金融に一定の規制をかける改革を進めた。多額の財政支出を伴う景気対策を打ち、経済の立て直しに取り組んだ。FRBのバーナンキ議長は、基軸通貨ドルの強みを生かしてドルを刷りまくって、世界中からドルを還流させて、アメリカ経済の再生を図った。しかし、目立った成果を上げることはできず、失業率は8%近い状態が続いた。景気は低迷し、格差は縮小せず、労働者や貧困層の不満が増大した。また、前政権の時代と合わせて4年連続で1兆ドルを超える深刻な財政赤字が続いた。
 アメリカ経済が目立った好転をなしえなかった原因の一つは、リーマン・ショックの根の深さにある。リ−マン・ショックは、ヨーロッパ諸国にアメリカ以上の大きな打撃を与えた。2010年(平成22年)初め、ギリシャが膨大な政府債務を隠していたことが露見し、欧州債務危機が深刻化した。リーマン・ショックから回復しかけたアメリカ経済は、欧州諸国の債務危機のたびに株価が下落し、消費意欲が低下するなど、足を引っ張られる形となっている。また、中国、インド・ブラジル等の新興国の経済発展も影響している。
 オバマ政権は、歴代の政権に比べると、社会保障政策に積極的だが、リーマン・ショックの影響への対応では、特定企業を救済するなど、労働者や貧困層より、財界を優先する姿勢を取った。その基本姿勢のもとでの若干の格差の是正に留まる。
 そうした中で力を入れているのが、医療保険制度改革である。米国には、わが国のような国民全員参加の公的医療保険制度がなく、高齢者・障害者向けのメディケアと低所得者向けのメディケードがあるのみだった。一般の国民は民間の医療保険に加入するのだが、保険料が高額なため国民の6人に1人が無保険者である。その数は、約5,000万人に上る。そのため、病気になって病院にかかると、医療費が払えず、破産する人が増え、深刻な社会問題となっている。第1期オバマ政権は、医療保険制度改革を内政の最重要課題に位置づけ、2010年(平成22年)年3月、医療保険制度改革法を成立させた。同法による公的医療保険制度は、「オバマケア」と呼ばれる。国民に保険加入を義務付け、保険料の支払いが困難な中・低所得者には補助金を支給し、保険加入率を94%程度まで高めようとするものである。だが、米国には、伝統的に自助努力の思想が強く、こうした政策に税金を使うことに対しては、財産権の侵害だとか社会主義だとかと言って反対する勢力がある。そのため最低限の医療保険の実現を通じての社会統合という方策は、大きな困難にぶつかっている。
 2012年(平成24年)11月の米国大統領選挙は、現職のオバマが、共和党のミット・ロムニーを破って再選された。選挙戦でオバマは、一定の公的ルールに基づく「公正な社会」を主張し、節度を保つ規制によって格差のない、平等な社会を作ろうとあらためて主張した。経済政策では、格差是正のための政府介入を説き、大幅な歳出削減は景気回復後に行うとし、富裕層に増税を課すと訴えた。だが、かつて米国民多数がオバマに寄せた希望は、しぼんでしまっている。
 国家財政は、深刻な状態に陥っている。2011年(平成23年)8月、連邦債務の上限引き上げ法案が成立し、かろうじてデフォルト(国家債務不履行)を回避したものの、2013年初めには、減税打ち切りと歳出の強制的削減による「財政の崖」に直面した。政府・民主党・共和党が合意し、かろうじて破綻を免れたものの、その後も、数か月単位でぎりぎりの段階でデフォルトを回避するというきわどい対応が続いている。米国が世界的な経済の混乱の発信源になりかねないという危うい状態である。

 次回に続く。

関連掲示
・拙稿「オバマVSロムニー〜2012年米国大統領選挙の行方」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion12m.htm
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