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2014年07月17日08:44

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イラクが過激派武装組織の進撃で内戦状態に6

●今後の展開の予想

 米国のシンクタンク、外交問題評議会(CFR)のリチャード・ハース会長は、6月15日付英紙フィナンシャル・タイムズで、イラクが三分裂するのは恐らく時間の問題だろうという予想を述べた。マリキ政権に強い影響力を持つ同じシーア派の盟主イランが支配する南部、クルド族による北部、そしてISISとイラク政府軍の抗争が続く首都バグダッドから北西の部分の3つである。
米国政府としては、シーア派主体のマリキ政権を退陣させ、スンニ派やクルド人との挙国一致型の新政権を発足させれば、宗派対立に加担することなく支援を行うことができるという考えのようである。だが、マリキ首相は退陣を明確に拒否しており、イランやロシアの支持で意を強くしていると見られる。
 マリキ首相は6月26日、シリアのアサド政権が当時のISISが占拠するシリア・イラク国境地帯を空爆したことを確認し、これを「歓迎する」と言明した。シリア国境に近いイラク西部カイムやルトバがシリアの空爆を受けたという報道がある。「イスラム国」と改称したISが支配する地域は今や、国境をまたいでイラク、シリアの両方に広がる。ISに対し、危機感を共有するマリキ、アサド両政権は今後も連携を強めていくとみられる。
 池内恵氏は、マリキ首相がより広くスンニ派を取り込んだ政権を成立させなければ事態の解決は考えられないという。だが、「スンニ派の旧フセイン政権支持層にも根強い支配者意識、優越意識があり、取り込みは困難を極める。ISISを前面に押し立てた軍事攻勢でスンニ派主体の地域支配を固めたことで、スンニ派の旧支配層は勢いづき、交渉による解決を一層困難にするだろう」とも述べている。複雑な対立が先鋭化し、内戦の拡大、混乱の深刻化、長期化の恐れがあるISの実効支配が固定化すれば、イラクばかりかシリアの分割にもつながり、隣接するスンニ派が多数派のヨルダンも不安定化しかねない。また、クルドの独立機運を抑え込むことも不可能になるだろう。中東はさらに不安定化する。
 池内氏は、イラン介入の場合に注意を促す。「ISISがイラク北部・西部からシリア北部・東部にかけての勢力範囲を固定化すれば、両国にまたがるスンニ派地域での事実上の国境再画定となりかねず、マーリキー政権がISISの掃討作戦を行えば、イラクやより広いアラブ世界では、シーア派対スンニ派の全面的な宗派間戦争と受け止められかねない。ここで気になるのはイランの介入である」「米国の消極姿勢が生んだ力の空白をイランが埋め地域覇権国としての地位を高めれば、サウジアラビアなどスンニ派のアラブ諸国が危機感を強め、イラクやシリアやレバノンでの代理戦争を宗派紛争を絡める形で一層激化させ、さらなる混乱をもたらす危険性がある」と。
 シスタニ師とサルヒ師の間で主導権争いが起こっているシーア派では、マリキ首相に退陣を迫る動きが広がっているという。ただし、主導権争いに伴い、後任選びは難航が予想されており、不透明な状況と伝えらえる。
 今後、「イスラム国」樹立宣言をしたISが勢力を伸ばし、イラクの中枢部まで支配する事態になれば、イラクに「イスラム過激派のテロ国家」が生まれることになる。中東での宗教戦争・宗派紛争は、深刻さを深めるだろう。ISはイラクを中心とする広域イスラム国家の建設を目指しているから、これが国際テロリズムの拠点となれば、脅威は中東にとどまらず、欧米等にも拡散するおそれがある。

 次回に続く。
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