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2014年03月13日10:00

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時代を越えて(20) 「私が愛した池田大作」

 矢野絢也 「私が愛した池田大作 虚飾の王との五十年」講談社2009 を図書館から借りてきた。昔は、時々創価学会関係の告発本や記事などを読んでいたが、今頃はご無沙汰だったが、本棚で目に留まったのである。

 著者の矢野氏は1953年に創価学会に入信し、2008年に退会している。1967年からは竹入委員長のもとで公明党書記長を20年間つづけた。竹入氏も1998年に創価学会を除名されている。
 矢野氏は大阪の人で、京都大学経済学部の学生のとき友人に誘われて入信した。この時は戸田城聖2代会長の時代だったが、池田氏は大阪担当で矢野氏はすぐに池田氏に目をかけられたとのことである。

 矢野氏は創価学会のマインドコントロールは解けたとして、池田会長を「虚飾の王」としたのだろうが、この本では池田会長のことを、いい面でも悪い面でも巨大な人だったと評価していて、池田憎しの告発本ではない。ただ、内弁慶で幹部の会合では、自由自在の演説で魅了するのだが、世界中の著名人との対談などでは痛いほど腰が低いとのことである。池田会長はそうして世界中から勲章や名誉博士号を集めているのだとか。矢野氏も金もかかるのに何のためのコレクションと不審がっている。

 この本のハイライトは、1969年の藤原弘達氏への創価学会内幕暴露本への出版妨害事件であり、そこから始まる創価学会の変質と、日蓮正宗との決裂と独立へ至る過程が描かれていることであろう。著者はそこまで言っていないが、たぶん、池田宗の立宗へと至るのではなかろうか。

 出版妨害事件では、時の自民党幹事長の田中角栄が直接、藤原氏に面会し出版の取り下げを依頼している。もちろん、竹入公明党委員長からの依頼があったからである。田中幹事長はそうまでして、公明党に恩を売りたかったのだが、それは自身が総理総裁になるための手段になるからだけでなく、竹入委員長との友情のためでもあった、情に熱い人だったと矢野氏は回想している。
 学会の方では本が出版されたら全部買いとって、日本大学学長に依頼して日本大学で燃やしてしまう準備をしていたそうであるが、結局、出版された「創価学会を斬る」は妨害工作が宣伝になりベストセラーになってしまった。

 この出版妨害事件は、創価学会が妨害を否定したために尾を引き、弘達氏が田中角栄の仲介を暴露したために、池田会長の国会への証人喚問問題へと発展した。しかし、なにしろ池田会長の内弁慶でどうにもならない。
 それを切り抜けたのは、証人喚問は全部の党の賛成がないとできないという前例を慣例に格上げするという知恵だったという。なにしろ、急先鋒の共産党も宮本書記長によるリンチ殺人事件を抱えていたのである。結局、この問題は、池田会長の1970年の政教分離宣言で最終的に決着した。
 この時、池田会長は総理大臣になるという野心をあきらめ、創価学会が日蓮正宗総本山・大石寺を乗っ取り、池田法王への道へと切り替えたのだという。それは、共産党との和解である「創共協定」から始まった。これには、東急の五島昇氏や松本清張氏が仲介したとのことであるが、竹入氏や矢野氏など公明党は反対した。これまで築いてきた自民党との信頼関係が揺らぐからだが、池田氏は協定はあっても共闘はないということで押し切られたとのことである。しかし、共産党は以後創価学会への攻撃を不思議なことに封印してくれたと、矢野氏はこの時の池田氏の決断を評価している。

 そして、1979年と1991年の二度にわたる大石寺との闘争を経て、創価学会は日蓮正宗大石寺から破門されたが、時間をかけていたせいか学会にはあまり打撃になっていないようである。
 この本で印象的なのは、池田氏が長い目で、将来構想の布石を打っていることであろう。その構想がどういうものなのかは側近でも分からない。それが、この本でしばしば出てくる、池田氏に振り回される場面が起きる原因であろう。
 しかし、池田宗になることは間違いないのではなかろうか。世界中からの勲章や博士号は、教祖のカリスマ化の布石に違いない。

 なお、日蓮宗とは日蓮の六人か七人の高弟が、それぞれ立宗したものである。日蓮正宗もその一つで、一番教義に厳格なものとのこと。だいたい、仏教にはたくさんの経典と宗派があるが、特に日本の場合、互いに寛容で、他宗を批判するようなことはない。また、長い間に作成された経典も、互いに矛盾する部分もあるはずだが、すべて釈迦の語ったもので、違いがあるのは、大衆向きか高僧向きかによるとしている。
 そのなかで、日蓮のみは「法華経」のみがただしく釈迦の語ったものであり、他の「南無阿弥陀仏」の浄土経や「色即是空」で有名な般若心経なども、悪魔の産物として拒絶した。どこが違うのかというと、「法華経」は釈迦は死ぬことはなく、永遠にどこかで福音を説いている。信者たちも釈迦に法華行者として認めてもらえれば、何度も生き代わって法華経の教えを説くことができる。「法華経」には自画自賛のみがあり何の教えもない、というのが根本的な批判であるが、他の宗派のように来世ではなく、現世浄土実現のために献身することを釈迦の教えとしているところに独自性があるのである。
 したがって、もともと「カエサルのものはカエサルへ」という政教分離ではなく、日蓮以来の政治的活動があり、それが弾圧の原因にもなってきたのである。昭和戦前期の革新運動にも日蓮宗が影響を与えたといわれている。

 創価学会とはもともと、創価教育学会であり、牧口常三郎初代会長が昭和初年に、日蓮正宗に入信してから信徒の中の教育関係者を集めた信徒団体であったし、戸田二代会長も教育者であった。
 現在、創価学会専属の僧侶を置いているという、逆転した関係になっている。やはり、何らかの組織改革がおこなわれるのだろうと思われる。

なお、本書は水滸伝や「中国の赤い星」に、山岡「徳川家康」を読むように面白い。信じあった仲間と組織を発展させていく献身的な活動が快いのである。
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