新聞に大きな広告が出たり、
「本来ならば決して世に出ることがなかったはずの物語」
と、いかにも面白そう!と読んだが、
はっきり言って、この作家にはもっと多くを期待していた。
今いち。残念。
実話ものの書き手としては力不足、
作者の思い入れが大きすぎて、実力が出せていない、と思った。
この本のカバーに使われている写真の撮影者⋅田原桂一と
梨園の妻であり一人息子の母でもある⋅博子の、禁断の恋の顛末を、
実名を交えながら、博子のママ友でもある作者が、
出版まで秘密を守り通して書き下ろした、という。
不倫の実話だし、博子の日記をところどころで引用しているので、
恋愛ものの放つ華やかでわくわくし、切なくどろどろするようなあれこれが、
あっさりと記されていて、何というか、
大人の恋の備忘録、みたいな感じ。
それは、恋する男女の容貌が昔のハリウッド映画か大昔のディズニーアニメのプリンスとプリンセスばりの
美男美女だという点が、絵空事っぽさを加えてしまい、
本物っぽい嘘、の放つ小説の面白さの真逆になってしまっていて、
かえって嘘臭い、とでも言えようか。
するすると読めたし、都内の有名店やホテルやらも
知っている場所ばかりで、リアル、
だから本来もっと私としては共感したり、主人公を応援したり、
と入り込めたはずが、今回は全くダメだった。
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