作者自身が、振り返ったらターニングポイントとなるかもと言う新聞連載小説。
少し読みにくかったのは、ストーリーよりも人物像に重きを置いての物語だから。
香川のうどん屋の孫みのりは、大学に入学し東京で暮らし始める。
大学をまたぐボランティアサークルに入り、途上国へのスタディツアーに参加したり、
友だちもできて、ボランティアにのめり込んで行くが……
生きづらさ感の匂うみのりには、
戦争で片足を無くした祖父清美がいて、随所で影響を与えてくる。
この小説の第二の主人公のような彼は、
何もしないし語ることもない老人なのだが、
実は戦前には才能のある若者だった、らしい、とみのりは知ることになる…
この老人には実在したモデルがいて、著者は資料を元に描いている。
こういう著作は、この作者に合うのかしら、と私は疑問に感じた。
それでも、執筆スタイルの変化の過程となるのかもしれない。
コロナ禍での連載だからかもしれないけれど、
世の中の閉塞感が、みのりの生きざまに反映されているようで、
正直なところ、私はあまり好みではなかった。
ただ……この作家だから、特別な出来事に"慟哭する"姿の描き方が、秀逸。
心を病んてしまうほどの悲しみをこう表現するのか、と。
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