mixiユーザー(id:7990741)

2021年07月14日10:42

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「クララとお日さま」カズオ・イシグロ著

ノーベル文学賞受賞後はじめて出版された長編。とても独特で面白かった。
「わたしを離さないで」に通じるような感じをもった。

主人公のクララが子どものAF(人工親友)なので、とても平易な言葉遣いで
たいそう恐ろしいような話を穏やかに紡いでゆく。
イギリスではない、おそらくアメリカのシングルマザー・クリシーと一人娘ジョシーとの生活が語られる。
都市まで自家用車で行けるような土地なのだが、
体の弱いジョシーはオンライン家庭教師のような学習をしていて、学校に行っていない。
つまり、母子は家政婦のメラニアさんと三人だけで孤立して暮らしているところに、
クララがやってきた。

物語は、店で商品として売られいたクララを ジョシーが選ぶに至るところから始まる。
そこで、クララはクリシーにあることをして見せるように言われるのだが、
そのあたりから、何やら怪しい展開含みの謎めいた様子が匂ってくる。

読みやすく組み立てられていながらも、実は大変な問題を提起している小説だ。
登場するキャラクター達がきっちり個性を放っていて、それぞれが共感を誘う。
けれど、なんとも複雑な感情を抱かせる小説だった。
面白いといっても、楽しいよりも興味を惹きつけられる、という面白さだったし、
悲しいといえば、私にはとても悲しいお話だった。
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