直木賞と本屋大賞同時に受賞の大作、
さすがに読みごたえある面白い長編だけれど、
私としては、こう感じざるを得ない。
もどかしいーー或いは、自分の教養の低さが情けない。
実在する浜松国際ピアノコンクールに、綿密な取材をしての著作
ということで、とにかくリアルなクラシック音楽コンクールの物語なので、
いきなり本編の前にコンクール課題曲と、主な登場人物四人の演奏曲が、
リストとなってバーンと掲載されている。
そこは、まあ、飛ばしても、
結局、本編では演奏するさまが緻密で詳細に描かれるから
そのメロディーが全く思い浮かばないとなると、
その苛立たしさや歯がゆさは、それこそ半端ない。
というのが、私の正直な感想。
直木賞というだけなら、まだ納得する。
しかし、これを本屋大賞に選んだ書店員達は、
一体どの程度メロディーが浮かんだのだろうか、
或いは一般読者に音が浮かぶと考えたのだろうか?
あれほどの、バリバリのクラシックの大曲の数々を。
やっぱり私はダメ。
いくら四人の性格や背景が鮮やかに描かれていても、
そのうちの一人が、あまりにも個性的な天才すぎて、
音楽家達に「珍種の動物」と見られる場面に大いに納得できても、
紡がれる音が全く想像できないならば、
この小説の良さは7、8割しか味わえない、
そんな小説は、嫌だ。なんというか悔しすぎる。
ただ、誰がコンクールに優勝するか、
その興味だけは尽きることなく最後まで保たれる。
その点は大変優れた長編だ。
ログインしてコメントを確認・投稿する