直木賞作家の連作短編集。読みやすくて、なかなか面白かった。
都電の通る少しさびれた感じの町の片隅に
あの世の人とつながりを持てるという噂の石灯籠がある古寺があり、
その近くのアパートや商店街の古本屋などをベースに
昭和の後半頃のちょっと貧しい人々が、不思議なことを経験する。
恋愛物語もあるが、むしろ家族や友だちとの触れあいが、
切なかったり悲しかったり・・・
さらに、懐かしいヒット曲の数々が要所要所で流れてきて、
その世代の読み手には、たまらない。
ただし商店街の名前に因んだ「アカシアの雨にがやむとき」だけは
文中でも懐メロとなってはいるけど。
今秋また始まったテレビドラマ「相棒」の初めの方のシリーズや「ドクターX」に出ていた岸部一徳が、
ザ・タイガースのメンバーとして、カッコいい代表みたいな描写になっているのも、
今ではなんだかおかしい気がする。
登場人物の憧れのスターということだから。
古い荒れ寺とか気難しい主人のいる古本屋とかは、
ピカピカのスーパーやらショッピングセンターには絶対に備わっていない魅力のある、
物語の生まれる場所なのかもね。
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