文芸誌(電子版も)に掲載された短編4作。
面白かった――特に表題作。
どれも女性が主人公で、恋愛ものとはいいがたいような哀しみを帯びた小説で、
ちょっと夢を見ているような雰囲気が漂う。
どの作品も女性同士の恋愛とか、子供を授かり切れない女性とか、
なんとなく暗いといえば、暗い。
でも、例えば「ウィステリア〜」は、夫婦二人暮らしのもうすぐ40歳の専業主婦が
毎日のルーティーンから一歩踏み出すような物語で、
彼女の心情と、彼女の目から見た別な女性が、抒情たっぷりに描かれていて好ましい。
この作家は、いつの間にか賞取り女流作家になっていたけれど、
なるほど益々実力が磨かれて行っている気がする。
特に、「ウィステリア〜」はステキだった。
参考までに、
文芸評論家山城むつみいわく
「変貌は長い熟成の後に一瞬でなされる。」
まさに、そういう小説が「ウィステリアと三人の女たち」だった。
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