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2017年12月18日11:07

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「アンマーとぼくら」有川浩著

さすが、としか言いようのない面白さだった。
有川ワールド炸裂の長編。「渾身の一冊」とさえ呼べるのかもしれないけれど、このレベル、彼女ならお約束?

主人公・リョウが那覇空港に到着した。
迎えに来ていたのは、沖縄でガイドの仕事をしている、おかあさん。
父を亡くしているリョウだから、いわゆる母一人子一人の母子なのだが、
おかあさんである晴子さんは後妻、つまりリョウにとっては継母なのだ。

物語は晴子の職業にからみ、あたかも二泊三日の沖縄本島の旅をしているように綴られる。
その行き先が、いかにも地元民の案内するような、ある意味ディープな場所ばかりで、
この一冊まるまる「沖縄本島LOVEガイドブック」ともなっている。
そこが非常に秀逸だと感じた。
(どうも私は地方愛にあふれる作家の小説に惹かれる傾向があるのかも)

リョウが育ったのは北海道で、本当の母はそこで、若くして病死してしまった。
傷をいやすこともできないままで、父の再婚に引きずられるようにして沖縄に移ったリョウ。
最初は晴子になつかず、典型的なギクシャクした関係だったのだが・・・

これは子供っぽい父と子ども時代の主人公との姿を通しての、純愛小説とでも呼ぶべきか、
晴子とお父さんの関係が素敵で、さらに血のつながらない母とリョウとの結びつきも、
平易な文章にもかかわらず丁寧に語られて素晴らしい。

短めの文で改行も多いから、どんどん読み進めて一見ラノベ風なのだが、
その奥で、きっちり主張されている家族の愛の形が、なんともいとおしい。
この寒い季節に、お勧めの一冊だった。
恐れ入りました。
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