芥川賞作家の最新刊なのだか、考えてみたら私はこの作家を読むのは初めて。
期待以上に面白かった。
主人公は京の市内に生まれ育った三人姉妹。
長女は図書館員で、有資格者かどうかは定かではないが、
ずっと同じ図書館に勤めている、典型的な地味タイプ。
次女は逆に女子力の高い、常に彼氏がいて、同性の友人はいないイケイケなOLで、
恋愛の修羅場をいくつも乗り越えてきた感のある、勝気な娘。
そして末娘は大学院生の、いわゆるリケジョ。
古都を舞台にこの3人が紡ぐ物語は、恋愛あり、家族のつながりあり、取り立てて大事件は無いようでいて、
人生の節目に差し掛かっている独身女性特有の試練というかチャレンジというか
解決すべき問題がふりかかってくる。
要所要所の描写から、次女が一番派手で目立つとハナからわかるが、
実は外見は控えめにしてはいるものの、三女は次女よりも美人かもしれない
などと、想像しながら読んでいくのも一興だ。
また、5人家族の中でたった一人男性のお父さんが、名前の通り蛍のようなのもおかしい。
ということで、ユーモアのエッセンスに満ちた、軽めの物語だけれど
次女をめぐる脇役たちの、作者の人物解題みたいな分析が、大変興味深かった。
特に、陰湿な言動の数々の仕打ちによって明かされる、
いけず
この、職場でのいじめ・パワハラのくだりは、一読の価値ありと思う。
これは、ある意味「お仕事バイオレンス小説」か?!
或いは、闘うOLの戦闘もの、か???
苦難を乗り越えていく次女の姿に私は応援したくなったけれど、
やっぱり関東の人間としては、三女にエールを送りたい。
ところで冒頭、三人娘の母親が突然
「私も主婦として定年を迎えます」
と宣言して、夕飯作りなどをボイコットするのだが、
なんとまぁ、専業主婦らしい大胆な発想で、あきれると同時にうらやましかった。
こんな甘い夫、ありえないんじゃない?
という点では、家族もののファンタジー、と言えるかも。
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