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2016年11月01日11:59

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「パークアヴェニューの妻たち」 ウェンズデー・マーティン著 佐竹史子訳

ニューヨークのアッパーイーストサイドに住み始めた、米国中西部出身の.「社会学者としてメディア出演歴がある」ライターのノンフィクション。
出版されるや否やベストセラーとなったそうで、確かに大変面白かった。

不思議なことに、この本の著者紹介のどこにも、イェール大学で博士号を取った著者が
一体何の学問をドクター論文として書いたか、明記されていない。
もちろん本文を読めばわかる、ということか・・・
とにかく人類学アプローチでもって、世界の最富裕層の専業主婦ママたちの実態を解き明かしている。
が、書き手が人類学者というわけではないのがキモかも。

本書の冒頭、まずは外部から中に入り込むという手法でもって、内情を探り研究しよう、決して「現地化」はすまい、
と志は高かったが、実際に子供を連れて暮らし始めると、どんどん富裕層の専業ママたちにのめりこみ、ついにはこんな章が一つ著わされる。
「ママはバーキンを欲しがる」
もちろん、あのエルメスの、入手がとても困難なカバンのことだ。

一事が万事、洋服やら靴、訪れる店やら、まるでテレビドラマの「ゴシップガール」を地で行く
かのような、外面は華やかで派手で、金満なことこの上ないのだが、
彼女たちが、実はソーシャルライフでは子供とママ友始め女性ばかりでつるみ、
パーティーやガラ(主にチャリティー目的)があっても、女部屋と男部屋で別々に談笑するみたいな図式となっている。
これは、NY郊外ウエストチェスターに3年半住んで、ほぼ毎日現地の人たち(英語が共通語だが、けっしてアメリカ人ばかりではなかった)と触れ合ってきた私には、とても意外だった。
普通アングロサクソンのソーシャルライフは、カップル単位でしょう?

著者がもともと研究者なこともあり、各所で様々な人類学者らの研究を引き合いに出しているが
そのほとんどがチンパンジーやヒヒなどの霊長類。
つまり、最富裕層の美女たちを、ゴリラなどと比べて見せて、そこが痛快だ。

アパートの買い方や、出遅れてしまった保育園入園の顛末、そしてなかなか溶け込めない息子と同年代の子の母親たちの輪、
などなど、著者の苦労が詳細に描かれ、その辛さも伝わってくるのだが、一方で意地悪なママたちを
霊長類の行動パターンと対比することで、うっぷんを晴らしているのが見て取れて、おかしい。

一体NYの最富裕層は、子供の教育や家族の避暑地滞在や、さらに妻の美粧・衣装代やらにいくらかけるのか
見栄を張る意味での避暑やスキー旅行なども含めて、年間10万ドルくらいと見積もりを上げたところなど、
は〜〜あとため息をつきたくなる。

最後のころに、実は著者は大変な苦難に遭うのだが、そのことによって、
研究対象者たちの持つ、別な面を知ることになるあたりは、これは子供のいる母親にしか想像できないような酷なできごとで、
そこを想像できるかできないか、で全く読み手の評価が違ってきそうな感じを持った。

マンハッタンにはせいぜい3,40回しか行ったことなかったし、映画やテレビからの情報と合わせて想像していた
アッパーイーストのセレブ達の実態を、かなり知ることができて、とても面白かった。
よく夫と言うのだけれど、さすがアメリカ人、スケールが違う!
(もちろん皮肉な意味を込めてです)
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