「楽園のカンヴァス」の作者の新刊。
ピカソの傑作の誕生したいきさつと、それを巡る物語を
この作家自らの勤め先だったNYの近代美術館MoMAの
架空のキュレーターをヒロインとして、描いた。
ピカソが生きた、ナチスがパリに侵攻する頃のパリを舞台にした話と
日本人キュレーターの瑶子が働く、911頃のニューヨークを主な活躍の場とした話が、
交互に順を追って巧みに語られる。
前世紀の偉人と周囲にいた実在の人物を描くことで、
フィクションがリアルさを増し、あたかも実際に起こった
明かされざる真実を読んでいるような錯覚に陥るほど、迫力を感じる。
やっぱり原田マハの美術小説は、MoMAがらみが面白い。
ピカソが美術に込めた反戦への強い意志を、
911以降に生きる日本人女性が受け継いでいこうとする。
その毅然としたヒロインと、ニューヨークや欧州の大富豪を結びつけ、
スリリングで、楽しい小説になっている。
面白かった。
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