mixiユーザー(id:7990741)

2016年04月06日22:21

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「ビオレタ」 寺地はるな著

第4回ポプラ社小説新人賞受賞作。
なるほど普通の大人向け小説とは少しばかり異なる気がした。
何しろ、直球ストレートの格言のような一文が、そこここに登場するのだ。
なんかヤングアダルト向けというか・・・
読みやすさ抜群、というのが第一の感想。

主人公の妙が、婚約破棄にあい、道で大泣きしているところを、菫さんに拾われるところから、この物語は始まる。
菫さんは、ビオレタという手作りの雑貨店のオーナーで、そこのスペシャリティは、なんと

棺桶

人以外の「もの」を入れて、丁寧に埋葬するのが、その店の売り。
ということで、様々な人が色々なものを埋葬するための棺桶を買い求めにやってくる。

というと、ちょっと誌的な香りがするようだけれど、実際の文章はむしろつたないくらいで、
登場人物たちも、どこか漫画チックで、さらに彼らの関係性も露わになってくると、ははぁ、という感じで、
複雑になりそうながらも、なんとも単純な展開、ともいえる。

でも、この小説がとても面白いと私が感じたのは、それは主人公を始め、彼女を取り巻く人々の
やさしさというか、魅力というか、
いじめられた者・傷ついた人に対する、著者の温かい視線が、大変好ましいから。

「余白は大切」とか「人を見下して喜ぶようなくだらない奴にサービスしてやる必要はない」とか、
作家の人生訓のような文章が、主人公のためにと述べられている辺りが、
ちょっとこそばゆいけれど、微笑ましくて楽しい。
何度か声に出して笑っちゃうくらい。

そして、いやな印象を与えながら登場したキャラが、一人を除いて、実はかなり良い人だとわかったり、
どん底にいた妙を、やさしく慰め、浮かび上がらせてくれる人たちを、いとおしく感じさえする。

ということで、深みはないかもしれないけれど、読後感の良さは、一級品だと思った。
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