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2016年03月23日11:21

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「33年後のなんとなく、クリスタル」 田中康夫著

嫌いな作家の書いたものを読み切るのは、かなりの苦行だった。
しかも文章は下手だし、何より作家自身「自分の表現力の乏しさを改めて痛感する」と書いてもいるし。

にもかかわらず、この本(小説といえるかどうか、私には決めかねる)を借りて読んだのは、確かめたい事があったから。

この著者と私は、実は同じ時期に同じ所に通っていた。
とはいっても、一世を風靡した、80年代の青山とか六本木辺りではなくて、
その前、彼が学生だった頃の、三多摩

国立市

にある大学、一橋大学が、彼の母校で、
当然私も田中康夫クンも、駅から大学までは、同じ大学通りを週何日か歩いていたはず。
(私の場合は、実家から出かけるので、ほぼ毎日通ったのが大学通り)

そんなわけで、私はこの作家がデビューする前に、すでに姿を見、話すのを聞いたことがあった。
一橋マーキュリーという、彼の所属(主宰)したサークルが開いたコンサートに、私の大好きだったバンドが出演し、
友だちと、ほぼ最前列で見ることができたのだが、その司会をしていたのが、一橋大生・田中康夫クンだった。

当時まだメジャーデビューして間もないころで、のちにNewsweek誌で「世界に誇るアーティスト100人」に選ばれた
名ドラマー・神保彰が、まだ加入する前の カシオペアにいち早く目をつけて、招致したのは、
えらかった。田中君、偉い!さすが。

80年代のベストセラー「なんとなく、クリスタル」の登場人物のうちのミュージシャンについて
「実は自分が淳一なのさ、と自己申告する音楽家が幾人も出現しましたよ」と、
今回の本では書いているけれど、30数年前一橋大学に招いたフュージョンバンドこそ、モデルだと私はにらんでいる。
というのも、田中康夫は司会をしながら、カシオペアを観察した様子を得意げに述べていたから。
(だから、「ずいぶん、長々と話すのね、学生司会のくせに」と私たちは感想を述べ合ったのだった。)

だとしたら、「なんとなく、クリスタル」のミュージシャンのモデルは、あの向谷実となる。
今や太ってしまって面影ないし、タモリの電車特集のゲストなど、電車オタクおじさん という感じなのだけれど。

そんな古いエピソードを思い出させるほど、とにかくこの著者の自己顕示欲の強さは、相変わらずで、
同性の友人がいないタイプ
の典型だと思われる。

代わりに、女性へのもてっぷりばかり、ぐだぐだと羅列し、
さらにはセレブっぽさを、食べるものやファッション雑貨などの蘊蓄を語ることで主張しているのだけれど、
富裕層のマンションに招かれても、調度品について、なんの描写もないところが、まだまだ浅いな〜
と、感ぜざるを得なかった。
万が一、次に続編を書くのなら、食器のお勉強は必須でしょうね。

東日本大震災における自分の活躍を始め、知事時代に考えていたことなどを、散りばめて表し、
負けて抜けた(とはいえないか?)政治家の回顧録としてならば、楽しめるのかもしれない。

総じて、過去の事実確認という意味で、私にはおもしろかった部分もあった。
とまとめないと、こんな本に無駄な時間を費やしてしまった〜、という後悔だけが残っちゃうものねぇ。
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