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2016年03月06日12:40

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「標的」(上・下) パトリシア・コーンウエル著 −ーありえない中高年夫婦とその仲間たち

ケイ・スカーペッタシリーズの最新作。
いつものメンバーの、いつもの猟奇殺人解決ストーリー。
今回もヘリコプターやらスマートライフルやら、大掛かり。
最新或いは「未来の」情報機器に彩られたド派手な小道具満載の 犯罪小説。

そのくせ(或いは、誇大な空想だからこそ?)食べるものについての描写は細かくてリアル。
イタリア料理に関するこだわりは、相変わらず強いし、おいしそう。
イタリア系の貧しい家に育ったという生い立ちについて、少し触れられていて、
特に父親との思い出を語る場面は、ファンにはたまらないかも。

ただ殺人の現場が地元ボストンだけでなく、ニュージャージーにも広がっているところが目新しい。
オシャレな場所にこだわってきたこの作家が、あえて、ダサイいジャージーを選ぶ、とは。
第一作から相棒役を務めてきた、メインキャラクター唯一の庶民派マリーノに
脚光を浴びさせるため、か、と読み手に期待をさせる。

そして今回の犯人が・・・・
ちょっと禁じ手っぽくも感じるけれど、シリーズを読み続けてきた人には
それもアリなんだろうなぁ、と。

そういえば、ヒロインのスカーペッタに年を取らせるのを止めたはずの作者が
今回は誕生日という設定から始めている点が、少し方針転換か、と感じさせられる。

が、私がこの前に読んだカズオ・イシグロの描いた「忘れられた巨人」の老夫婦と
あまり年は違っていないはずの、ケイとベントンのカップルとの
とてつもない差に、時代や国が違う以上の大きさを、しっかりと感じたにもかかわらず、
共通しているのは、
繰り返しになるけれど

私には、何よりも、年とってもこんなにお互い愛し合っている老夫婦の存在こそが
ファンタジー。

ありえないんじゃない?
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